株主総会・取締役会議事録の作り方|法定記載事項と登記・DDで見られる点
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
登記申請を法務局に出したところ、取締役会議事録の記載が足りないという理由で補正を求められた。あるいは、資金調達のデューデリジェンスで、投資家側の弁護士から過去数年分の株主総会議事録・取締役会議事録の提出を求められ、揃えてみると押印が漏れている回や、議事録自体が作成されていない回が出てきた。管理部門を1人で担っている会社では、こうした指摘を受けて初めて議事録の作り方を見直すことになる場面が少なくありません。議事録は決議内容と手続を後から確認するための中心的な記録であり、後から作り直すことも、当時の出席者の記憶に頼ることも簡単ではないという性質があります。
株主総会議事録の法定記載事項
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと会社法318条1項に定められています。具体的な記載事項は会社法施行規則72条に定められており、開催の日時及び場所(出席方法を含みます)、議事の経過の要領及びその結果、法定の意見・発言があった場合はその概要、出席した取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人の氏名又は名称、議長がいる場合はその氏名、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名が含まれます。
見落とされやすいのは、決議の結果だけでなく「議事の経過の要領」も記載事項に含まれる点です。可決・否決の結論だけを短く書いた議事録は、法定の記載事項を満たしていない可能性があります。議案の提案者、審議の概要、質疑応答があればその概要まで残しておくと、記載事項としても、後日の説明資料としても安定します。
取締役会議事録の署名・記名押印
取締役会の議事についても、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければなりません。会社法施行規則101条には、開催の日時及び場所、議事の経過の要領及びその結果、特別の利害関係を有する取締役があるときはその氏名、取締役会に出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名又は名称、議長の氏名などが記載事項として定められています。
株主総会議事録と大きく異なるのは押印の扱いです。会社法369条3項により、取締役会議事録が書面で作成されているときは、出席した取締役及び監査役がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません。同条4項では、議事録を電磁的記録で作成した場合には、記録された事項について署名又は記名押印に代わる措置、実務上は電子署名を行う必要があるとされています。株主総会議事録には会社法上こうした署名・記名押印の義務が置かれていないため、この違いを理解せずに株主総会議事録と同じ扱いで取締役会議事録を作成すると、押印が漏れたまま何期分も積み上がることがあります。
出席した取締役・監査役のうち1名でも署名又は記名押印を欠くと、議事録としての体裁が崩れます。特に代表取締役の選定を決議した取締役会では、後述のとおり登記の場面で押印の有無が直接問われるため、開催の都度、出席者全員の押印を確認する運用が要ります。
みなし決議の議事録の特殊な記載
株主総会については株主全員の書面又は電磁的記録による同意、取締役会については定款の定めを前提とする取締役全員の書面又は電磁的記録による同意により、決議があったものとみなされる場合があります。この場合の議事録には、通常の議事録とは異なる記載事項が定められています。
会社法施行規則72条4項1号では、株主総会のみなし決議の場合、決議があったものとみなされた事項の内容、提案をした者の氏名又は名称、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載することとされています。取締役会のみなし決議についても、会社法施行規則101条4項1号に同様の構成の記載事項が定められています。
みなし決議の議事録で実務上つまずきやすいのは、同意を得た日付の特定です。全員の同意が揃った日が決議の日になるため、誰からいつ同意を得たかを個別に記録し、最後に同意した日を議事録に反映させる必要があります。同意書やメールを議事録の裏付け資料として保存しておくと、後日この日付を説明する場面で困りません。
登記添付書類になる場合に法務局で見られる点
役員の変更、募集株式や新株予約権の発行、定款変更に伴う登記事項の変更などでは、株主総会議事録や取締役会議事録が登記の添付書類になります。この場面で法務局が確認するのは、決議事項の内容が登記すべき事項と整合しているか、法定の記載事項が揃っているか、そして押印です。
代表取締役の選定を内容とする取締役会議事録については、商業登記規則61条により、出席した取締役・監査役の個人の実印による押印と印鑑証明書の添付が必要になる場合があります。ただし、変更前の代表取締役が議事録に会社の届出印で押印しているときは、この印鑑証明書の添付を省略できる取扱いがあります。この違いを知らずに毎回全員分の印鑑証明書を集めていると不要な手間がかかり、逆に省略できると思い込んで必要な印鑑証明書を落とすと補正の対象になります。どちらに当たるかは、選定した取締役会に誰が出席し、誰の印鑑で押印しているかによって決まるため、議事録を作成する段階で登記の要否とあわせて確認しておくと手戻りがありません。
電子化と備置き・閲覧
株主総会議事録は、会社法318条2項により株主総会の日から10年間本店に備え置かなければならず、同条3項によりその写しを支店に5年間備え置く必要があります(電磁的記録による代替が認められる場合があります)。株主及び債権者は、営業時間内であればいつでもこの議事録の閲覧又は謄写を請求でき、親会社の社員は裁判所の許可を得て同様の請求ができます。
取締役会議事録についても、会社法371条により取締役会設置会社は取締役会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならないとされています。株主は権利行使のために必要があるときに閲覧謄写を請求でき、監査役設置会社などでは裁判所の許可を要する場合があります。取締役会議事録には支店備置きの規定はなく、株主総会議事録とは扱いが異なります。
電子化した議事録を保存する場合も、この備置き期間と閲覧請求への対応が前提になります。クラウドのフォルダに保存するだけでなく、いつの議事録がどこにあるかを一覧化し、必要になったときにすぐ取り出せる状態にしておくことが、備置き義務を実質的に満たすことにつながります。過去の議事録が散在している会社では、登記や投資家対応の依頼が来てから探し始めるのではなく、決議の都度、日付・議案・出席者・押印状況を一覧で管理しておくと、次に同じ確認を求められたときの負担が大きく変わります。
過去の議事録の棚卸しという備え
議事録は、法定記載事項、押印、みなし決議特有の記載、登記添付書類としての押印要件、備置き期間という複数の規律が重なる書類です。作成した時点では問題なく見えても、数年後の登記や資金調達のデューデリジェンスで初めて不備が表面化することが多く、そのときには当時の出席者の記憶に頼らざるを得ない状況になりがちです。過去の議事録を一度棚卸しして、記載事項・押印・保存状態を確認しておくと、次に登記や投資家対応の場面が来たときの準備になります。
議事録の棚卸しや今後の作成体制の整備は、社内のガバナンス設計の一部として扱うと進めやすくなります。LegalAgentのコーポレートガバナンス支援では、議事録の記載事項確認から今後の作成フローの設計まで対応しており、日常的な議事録作成を含めた法務体制全体を外部から支える窓口として法務アウトソーシングもご利用いただけます。取締役会の招集・決議手続は取締役会の運営実務、定時株主総会の準備ははじめての定時株主総会で別に確認できます。
過去の議事録を横断的に確認したい場合や、次の資金調達に向けて資本政策関連の手続を点検しておきたい場合は、優先株式発行の手続|定款変更・種類株主総会から登記・クロージングまでやシリーズA前後の法務DDで、投資家に見られるポイントもあわせてご確認ください。