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反社チェック体制の作り方|条項はあるが運用がない会社への実務手順

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

契約書に反社会的勢力排除条項を定めていても、誰が・いつ・何を確認して取引を開始するのかという具体的な運用が文書化されていない企業は少なくありません。IPO準備や金融機関との取引開始にあたって体制の提示を要請され、条項の記載だけで実態が伴っていなかったことに気づく例が多く見られます。

排除条項は相手方が反社会的勢力と判明した場合に契約を解除するための根拠であり、取引前の確認手順そのものを定めるものではありません。審査で問われるのは、確認の手続きが実際に運用され、その証跡が残されているかという点です。

法的根拠とIPO準備における位置づけ

反社チェックは、特定の法律の条文で一律に義務付けられているわけではありません。実務上の主なよりどころとなっているのは、2007年6月19日に犯罪対策閣僚会議幹事会が申し合わせた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」です。この指針は、反社会的勢力を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義し、取引を含めた関係遮断や外部専門機関との連携といった基本原則を示しています。

また、2011年10月までに全都道府県で施行された暴力団排除条例も根拠となります。東京都の条例では、契約相手が暴力団関係者でないことの確認や、契約書への排除条項の導入が事業者の努力義務として定められています。努力義務であるため直ちに罰則が科されるものではありませんが、IPO審査や金融機関の与信判断では、この努力義務に沿った社内体制が構築されているかが確認されます。

新規上場申請では、反社会的勢力との関係がないことを誓約する確認書の提出が必要です。特に初期の契約や知人の紹介で始まった取引について確認記録が残っていないケースが指摘されやすいため、上場準備に入る段階で取引先・株主・役員の一覧を作成し、確認状況を整理しておくことが役立ちます。

確認の対象・時期・調査手段

チェックの対象は、新規取引先、株主、役員、採用予定者の4つに分類されます。取引先は契約金額や継続性に応じて確認範囲を定め、株主は新株発行や株式譲渡の際に実質的支配者まで遡るかを検討します。役員は就任時、採用は入社前に、それぞれの職務権限に応じて確認を行います。

実施する時期としては、取引開始時の事前チェック、一定期間ごとの定期点検、そしてM&AやIPO準備時の一括確認の3つの場面があります。取引開始時だけでなく、契約後の役員交代などに備えて定期的な点検手順を決めておくことが実務的です。

主な調査手段には、新聞記事データベースの検索、専門調査会社への依頼、業界団体を通じた照会の3種類があります。自社で手軽に行える新聞記事検索、調査精度は高いが費用と日数を要する専門調査会社、同業の実績を照会できる業界窓口など、取引の規模や性質に応じて適切に使い分けることで実効性とコストのバランスを保ちます。

疑いが生じた場合の対応手順

調査の結果、相手方に疑いが生じた場合の対応は、契約の締結前か後かで分かれます。

契約締結前であれば、取引を見送ることが基本方針となります。営業担当者だけで判断せず、管理部門や経営陣へ報告したうえで組織として取引停止を決める流れをあらかじめ決めておきます。

契約締結後に疑いが浮上した場合は、契約書の排除条項に基づく解除を検討します。無催告解除の可否や損害賠償責任の免責条項を確認したうえで、解除通知の送付、納品物や未払金の精算、直接の接触を避けた連絡方法の検討を進めます。現場の判断だけで取引を継続してしまう事態を防ぐため、最終判断者を社内規程で定めておくことが大切です。

確認記録の管理と台帳の形式

体制が機能しているかどうかは、記録の有無によって客観的に判断されます。IPO審査や取引先からの確認に応じるためにも、次の5つの項目を台帳等に残しておきます。

  • 確認日
  • 確認対象(取引先名、株主名、役員名など)
  • 使用した調査手段(新聞記事データベース、調査会社、業界照会など)
  • 確認結果
  • 承認者

これらを一覧表や専用の管理システムに集約し、契約書データと紐付けて保管しておくことで、後から確認履歴を正確に提示できます。記録が残っていなければ、実務上は確認を行っていなかったと見なされかねません。

スタートアップの初期運用と専門家支援

初期段階のスタートアップが最初から大規模な体制を整える必要はありません。まずは確認担当者を決めること、一定金額以上の契約は事前に必ず確認すること、そして結果を記録する台帳を1つ用意することの3点から運用を始めます。

取引件数が少ないうちに台帳と確認の流れを作っておけば、事業拡大後の点検負担を大きく減らせます。資金調達時の法務DDでも確認記録の有無が確認されることがあるため、シリーズA前後の法務DDを進める企業は早めの着手が有効です。契約書の条項そのものの記載例は別の記事で解説しています。

LegalAgentでは、反社チェック体制の設計や社内規程の整備をコンプライアンス支援で、既存取引先の一括点検や審査対応をIPO支援で支援しています。

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