SPAの表明保証で、創業者が見落としやすいリスク
こんにちは!Legal Agent 代表弁護士の朝戸です。
M&Aの株式譲渡契約、いわゆるSPAでは、表明保証条項が非常に重要です。表明保証は、売主が会社や株式について一定の事実が正しいことを約束する条項です。もし表明保証に違反があった場合、補償責任につながることがあります
スタートアップのM&Aでは、創業者が売主になることが多いです。そのため、表明保証の内容を十分に理解しないまま署名すると、後から思わぬ責任を負う可能性があります
表明保証は、単なる形式条項ではない
SPAの表明保証は、契約書の中で長く細かく書かれることが多いため、形式的な条項に見えるかもしれません。しかし、実務上は、買主が法務DDで確認した事項を契約上の責任に落とし込む重要な部分です
たとえば、会社が適法に設立されていること、株式が有効に発行されていること、主要契約に違反がないこと、税金や社会保険の未払いがないこと、訴訟や紛争がないこと、知的財産が会社に帰属していること、個人情報保護法に違反していないことなどが表明保証されます
これらに誤りがある場合、売主が補償責任を負う可能性があります。創業者としては、知らなかったでは済まない形になっていることもあるため、表明保証の範囲を慎重に確認する必要があります
知識限定と重要性の限定
売主側で特に確認すべきなのが、知識限定と重要性の限定です。知識限定とは、売主が知っている範囲に限って表明保証するという考え方です。重要性の限定とは、すべての軽微な事項ではなく、重要な事項に限って表明保証するという考え方です
買主は広い表明保証を求めることが多いです。一方で、売主としては、自分が確認しきれない事項や軽微な事項まで無限定に責任を負うのは重い場合があります
特に、スタートアップでは、過去の細かい手続や契約書類が完全に整っていないこともあります。創業者がすべての過去事実について無制限に保証するのではなく、合理的に確認できる範囲や重要な事項に限定できないかを検討することが重要です
知的財産と開発体制
スタートアップのSPAで見落としやすいのが、知的財産に関する表明保証です。プロダクトのソースコード、商標、ドメイン、デザイン、データ、AIモデルなどが会社に帰属していることを表明保証する条項が置かれることがあります
外部委託者、副業メンバー、業務委託エンジニア、共同研究先が開発に関わっている場合、成果物の権利が会社に移転しているかを確認する必要があります。契約書がない、契約書はあるが知的財産条項が弱い、過去の開発者との関係が曖昧といった場合、表明保証違反のリスクになる可能性があります
生成AIを使って開発やコンテンツ作成をしている場合には、AIサービスの利用条件や第三者権利侵害のリスクも確認されることがあります
個人情報、労務、税務も見落としやすい
SPAの表明保証では、個人情報保護、労務、税務に関する条項も重要です。プライバシーポリシーが実態と合っていない、顧客データの取扱いが説明できない、業務委託と雇用の区別が曖昧、未払い残業代のリスクがある、税務申告に問題があるといった点は、M&A後に問題になる可能性があります
創業者は、事業やプロダクトには詳しくても、労務や税務の細かいリスクをすべて把握していないことがあります。そのため、SPAの表明保証を読むときには、法務、会計、労務の専門家と一緒に確認することが望ましいと考えています
補償責任の上限と期間
表明保証違反があった場合の補償責任については、上限額、期間、免責金額、請求手続を確認する必要があります。売却価格に対して過大な補償責任を負う形になっていないか、いつまで責任が残るのかを確認することが重要です
買主側はリスクをカバーしたい一方で、売主側としては、売却後も長期間不安定な責任を負い続けるのは避けたいところです。リスクの性質に応じて、一般表明保証と基本表明保証、税務、労務、知的財産などを分けて考えることがあります
LegalAgentでは、SPAの表明保証を、契約書の定型条項ではなく、M&Aのリスク配分そのものだと考えています。創業者が売却側になる場合には、表明保証の一文一文が将来の責任につながる可能性があるため、DDの内容と合わせて慎重に確認することが重要だと考えています
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