M&Aの弁護士費用はいくら?法務DD・SPA・クロージングの料金と見積り
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
M&Aで弁護士へ相談するとき、最初に分かりにくいのが費用です。「法務DDはいくらか」「SPAの作成・レビューは別料金か」「交渉やクロージングまで含まれるか」を確認しないまま金額だけを比較すると、依頼後に必要な業務が見積りの対象外だったと分かることがあります。
M&Aの弁護士費用には、固定料金、タイムチャージ、月額のアドバイザリー報酬、成功報酬など複数の方式があります。同じ「M&A支援」でも、法務DDだけを行う場合と、LOIからSPA交渉、クロージングまで担当する場合では業務範囲が異なります。
公開されているM&A弁護士費用の例
法律事務所が公開している料金を見ると、法務DDや契約書対応の設定には幅があります。2026年7月11日時点で確認できた公開例は次のとおりです。各事務所で前提となる取引規模、調査範囲、交渉対応の有無が異なるため、金額をそのまま平均相場として扱うことはできません。
| 公開元 | 法務DD | 株式譲渡契約・最終契約 |
|---|---|---|
| 杉本拓也弁護士 M&A・事業承継支援 | フルスコープ150万円を基本に100万〜200万円(税別) | 一般的な株式譲渡契約の作成・交渉20万〜40万円(税別) |
| 弁護士法人三井法律会計事務所 | 110万円から | 株式譲渡契約書等の作成55万円から |
| 誠啓法律事務所 | 1時間4万円(税別)、日当・実費別 | 1時間4万円(税別)、最低30万円(税別) |
公開例だけでも、固定料金と時間制があり、法務DDとSPAが別枠になっていることが分かります。税込・税別の表示も各ページで異なります。料金ページは改定されることがあるため、依頼時には各事務所の最新情報と個別見積りを確認してください。
M&A法務で費用が発生する業務
M&Aで弁護士が担当する業務は、大きく分けると次の四段階です。
- NDA・LOI、取引スキームなどの初期検討
- 法務DDと調査結果の報告
- SPA・事業譲渡契約などの最終契約作成・交渉
- 前提条件管理、必要書類、署名・決済などのクロージング対応
見積書に「M&A法務一式」とだけ書かれている場合には、どの段階まで含まれるかを確認します。法務DDの見積りにSPA作成が含まれるとは限らず、SPAの見積りに相手方との交渉、取締役会・株主総会議事録、登記、クロージング当日の対応が含まれるとも限りません。
法務DD費用を左右するもの
法務DDの作業量は、資料のページ数だけでは測れません。対象会社の子会社数、事業・許認可の数、主要契約、株主構成、労務問題、知的財産・データの重要性によって調査範囲が変わります。
短い期限でフルスコープの調査を行う場合には、複数の弁護士が並行して資料を確認することがあります。英文契約、海外子会社、業法規制、独占禁止法・外為法などの確認が必要であれば、担当者と費用が増える可能性があります。反対に、事業やリスクを限定し、レッドフラッグ事項だけを報告する方式であれば、範囲を絞れる場合があります。
法務DDの目的・調査項目・成果物は、法務デューデリジェンスとは?M&A法務DDの目的・流れ・必要資料で説明しています。
SPA・株式譲渡契約の費用を左右するもの
SPAの費用は、新規ドラフトか相手方ドラフトのレビューか、買主側か売主側か、交渉回数、DD結果の反映、価格調整、補償、アーンアウトの有無によって変わります。株主が複数いる案件、優先株式・SO・J-KISSが残っている案件では、売主、売却株式、対価分配、クロージング手続の確認も必要です。
基本合意書、SPA、付随契約、役員退任書類、株主名簿書換、取締役会・株主総会議事録を誰が作るかも費用に影響します。契約書のレビューだけを依頼し、交渉とクロージング管理は社内又はFAが担う方法もあります。社内にM&A経験者がいない場合には、業務を分割しすぎると論点の受渡しに時間がかかるため、LOIからクロージングまで一貫して依頼する方が進めやすいことがあります。
買い手側と売り手側の費用の違い
買い手側では、法務DDとSPAの双方が必要になることが多く、調査範囲が費用の中心になります。対象会社のリスクを確認したうえで、価格、前提条件、表明保証、補償へ反映するためです。
売り手側では、買い手が実施する法務DDへの回答、開示資料の整理、SPA交渉が中心になります。売却前にセルサイドDDを行う場合には、その費用が加わります。複数の買主候補へ同じ説明を行う案件では、事前に資料とリスク説明を揃えておくことで、後続のQ&Aを減らせる場合があります。
見積り前に共有する情報
初回相談の段階で次の情報を共有すると、見積りの前提が明確になります。
- 買い手側又は売り手側の別
- 株式譲渡・事業譲渡などの想定スキーム
- 対象会社の事業、規模、子会社・海外拠点
- 基本合意書、データルーム、DDの進捗
- 希望する調査範囲、報告書、契約書対応
- 契約締結・クロージングの予定日
まだ取引スキームや調査範囲が決まっていない場合には、その設計自体を初期業務として切り出せるかを確認します。最初に小さな範囲で依頼し、買収方針が固まった後に法務DDとSPAへ進む方法もあります。
M&Aの見積書で確認する項目
複数の見積りを比べる場合は、総額とともに、資料提供依頼リスト、Q&A・インタビュー、中間報告、最終報告書、SPA対応、交渉、クロージング、修正回数、実費が含まれるかを確認します。タイムチャージの場合には、担当者ごとの時間単価、想定時間、上限額、進捗報告の頻度も比較対象になります。
LegalAgentでは、取引スキーム、対象会社の事業、希望日程を確認したうえで、法務DD、SPA、クロージングの業務範囲を分けてお見積りします。必要な作業と対象外業務を着手前に確認したい場合は、M&A支援からご相談いただけます。
参照資料
- 『業種別法務デュー・ディリジェンス実務ハンドブック』3〜13頁
- 藤原総一郎ほか『M&Aの契約実務』2頁
- 杉本拓也弁護士「費用について」
- 弁護士法人三井法律会計事務所「報酬基準」
- 誠啓法律事務所「弁護士費用(買い手)」
よくある質問
M&Aの弁護士費用はいくらですか?
法務DD、契約書作成、交渉、クロージングの範囲と、固定料金・時間制などの料金方式によって異なります。公開料金にも幅があるため、業務範囲と対象外業務をそろえて見積りを比較する必要があります。
法務DDとSPAの費用は別ですか?
別料金として設定する法律事務所が多くあります。法務DDの見積りにSPA作成・交渉が含まれるとは限らないため、Q&A、報告書、契約書対応、クロージングの各範囲を確認してください。
M&Aの見積りには何を伝えればよいですか?
買い手側・売り手側の別、取引スキーム、対象会社の事業と規模、希望日程、データルームの状況、希望する調査範囲・報告書・契約書対応を伝えると、見積りの前提が明確になります。