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共同創業の株式比率とベスティングとは|退任時の買取設計まで一体で決める

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

共同創業の相談で最初に聞かれるのは、たいてい「株式は何対何にすればいいか」という比率の質問です。しかし、比率だけを先に決めて、退任時にその株式をどう扱うかを決めないまま登記まで進んでしまうと、後から調整する手段は限られます。比率は最初の一手に過ぎません。役割分担、フルタイム移行の時期、意思決定の方法、退任事由ごとの株式処理、ベスティング、買取主体・価格・手続、税務、そして次回調達での見直しまでを一体で設計して初めて、共同創業者の株式は資本政策として機能します。

共同創業者同士でなぜ関係が悪化する前に契約を結ぶべきかという論点は、創業者間契約は、仲が良いときにしか作れないで扱いました。その創業者間契約の中核にあるのが、株式比率とベスティングの設計です。役割、フルコミット時期、退任事由、買取主体・価格・手続、税務、将来調達までを一体で決めて初めて、資金調達の場面で投資家に説明できる形になります。

持分比率を決める前に作る役割表

株式比率を決める作業は、資本金の払込額を人数で割るだけでは終わりません。

磯崎哲也氏『起業のエクイティ・ファイナンス』は、共同創業者の持株比率がほぼ同じ「仲良し」な資本構成の実例としてGoogleの上場時株主構成を紹介したうえで、実力にも経緯にも差がない共同創業者同士では、誰か一人が突出した比率を主張しにくいことを指摘しています(同書75頁)。比率を平等にすること自体よりも、比率を決める前提が共有されているかどうかが問題になります。

前提として整理すべき事項は、出資した金額にとどまりません。誰がフルタイムで関与するのか、いつからフルタイムに移行するのか、技術・顧客・採用・資金調達のどの領域を誰が担うのか、会社に提供する知的財産や既存の顧客関係は誰のものかという役割表です。フルタイム移行の時期は特に見落とされやすい論点です。副業として関与を始め、半年後にフルタイムへ移行する共同創業者と、初日からフルタイムで働く共同創業者を同じ比率で扱うかどうかは、役割表を作らないまま比率だけを決めると後から説明しにくくなります。

比率を決めるとき、CEOが常に過半数を持つべきだとは限りません。技術が事業の中核であり、技術担当が主導権を握る事業であれば、比率の設計はそれに応じて変わります。反対に、二人が対等な比率でも、意思決定の方法や退任時の株式処理が別途設計されていれば、対等な比率自体が直ちに機能不全を招くわけでもありません。比率の高低よりも、その比率を裏付ける役割と、役割が変わったときに株式をどう調整するかの合意の有無が、実務上の分かれ目になります。

株式を先に渡す設計と、段階的に得る設計

共同創業者への株式の渡し方には、大きく二つの型があります。設立時に発行済株式として先に渡し、退任時に一定割合を返還させる型と、新株予約権のように権利を段階的に確定させていく型です。

前者の代表例が、シリコンバレーで広く使われるリバースベスティング(reverse vesting)です。同書は、退任時に株式を返還させる創業株主間契約の条項例として、締結から12か月以内の退任等では返還割合0%、12か月超24か月以内では25%、24か月超36か月以内では50%、36か月超48か月以内では75%、48か月超では100%という段階的な返還スケジュールを紹介しています(同書77〜78頁)。この型は、株式自体はすでに発行済みであり、退任時に契約に基づいて一定数を譲渡させる構成を取ります。

米国のリバースベスティング条項は、Restricted Stock Purchase Agreementなど米国会社法・証券法の枠組みを前提に作られています。日本の会社法には、米国のRestricted Stockに相当する取得条項付株式の仕組み自体はありますが、共同創業の場面で実務上多く使われているのは、普通株式を発行したうえで、創業株主間契約(覚書)により、退任時に一定数の株式を他の創業株主または会社に譲渡する義務を課す構成です。同書も、種類株式でも同様の設計は可能だとしつつ、発行するのはごく普通の株式で済み、シンプルな契約による制限の方式を紹介しています(同書78頁)。米国式のベスティング条項の文言をそのまま日本語に翻訳して契約書に貼り付けても、日本法上は株式譲渡契約としての性質を持つ合意になる点を踏まえて設計し直す必要があります。

段階的に得る設計としては、新株予約権を用いて、勤務期間に応じて行使可能数が増えていく設計もあります。この場合、未行使の新株予約権は退任時に消滅させる設計にしやすく、株式そのものを返還させる構成に比べて、退任時の譲渡や税務の論点を回避しやすい面があります。もっとも、新株予約権による段階付与は、発行手続、行使価額の算定、税務上の取扱いが株式の直接発行とは異なるため、別個の検討が必要です。

退任事由と買取条件

退任時の株式処理を検討するとき、Good leaver(円満退任者)とBad leaver(背信的退任者)という英語のラベルだけを契約書に書いても、運用の場面では機能しません。誰が円満退任にあたるかを主観的に判断する余地を残すと、契約があっても争いの火種になります。

同書が紹介する条項例は、退任事由を客観的な要件で三段階に書き分けています。基本形は、代表取締役、取締役または従業員のいずれの地位も失った場合を退任等と定義し、原則として保有株式の大部分(直後保有株式数の10%を除く部分)を譲渡対象とする設計です。この退任等につき「やむを得ない理由」があると取締役会が認めた場合には、勤務期間に応じた計算式(勤務日数×保有株式数の5%/365日、ただし下限10%・上限20%)で返還数が圧縮されます。反対に、退任者が競合会社を設立・出資・就職した場合、会社法339条2項の「正当な理由」による解任があった場合、または重要な表明保証違反・契約違反があった場合には、保有株式の全部が譲渡対象になります(同書80〜81頁)。この設計では、4年間勤務してもらえる株式は最大でも当初保有数の20%にとどまり、上場やバイアウトまで在籍して初めて全部が確定します(同書81頁)。

この条項例は、特定の会社の判断を前提にした一例であり、そのままひな形として転用できる保証はありません。ここから読み取るべき点は、数値そのものより、退任事由を「地位喪失の有無」「やむを得ない理由の有無」「重大な背信行為の有無」という客観的に認定できる要素に分解し、要素ごとに買取割合と価格を変える設計手法です。円満退任と背信的退任を同じ扱いにする必要はなく、必ず区別しなければならないわけでもありません。区別する場合は、誰が「やむを得ない理由」を認定するのか(取締役会か、創業者間の協議か)、判断の基準をどこまで契約書に書き込むかを、会社の実態に応じて詰める必要があります。

価格についても、額面または取得価格で常に買い戻せるとは限りません。取得価格での買取りを認める契約は有効に成立しますが、取得後に会社の企業価値が上がっている場合、税務上・当事者間の公平性の観点から別の論点が生じます。この点は次の「譲渡時の税務と価格」で扱います。

誰が株式を買い取るか

退任者の株式を誰が引き受けるかには、他の共同創業者、会社、第三者という三つの選択肢があります。

他の共同創業者が個人として買い取る場合、資金の問題が先に立ちます。株価が上昇していれば、買い取るための現金を個人が用意できるとは限りません。同書も、共同経営者が辞めるときに社長個人が実際に買い取れるかどうかは、そのときの株価、社長の手元資金、税制などの要因に左右されると指摘しています(同書84頁)。

会社が自己株式として買い取る場合、会社法上の手続を踏む必要があります。株式会社は、株主との合意により自己の株式を有償で取得する場合、あらかじめ株主総会の決議によって取得する株式数、対価の内容・総額、取得できる期間を定めなければなりません(会社法156条1項)。退任した特定の創業者だけから取得する場合には、この株主総会決議において、その特定の株主に対して取得の通知を行う旨をあわせて定める必要があり(会社法160条1項)、他の株主には自分も売主に加えるよう請求する機会が与えられます(同条2項・3項)。特定の株主を定めるこの株主総会決議は、通常の普通決議ではなく、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数による特別決議によらなければなりません(会社法309条2項2号)。加えて、株式会社が株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、当該行為の効力発生日における分配可能額を超えてはならないという財源規制があります(会社法461条1項・2項)。創業初期のスタートアップは利益剰余金が積み上がっていないことが多く、同書も、会社に現金があっても分配可能額の範囲内でなければ自己株式を買い戻せない場合があると説明しています(同書87頁)。資本金や資本準備金の取り崩しで枠を増やす方法もありますが、債権者への通知など別の手続と対外的な説明の問題が生じます(同書87〜88頁)。

第三者への譲渡は、譲渡制限株式である以上、会社の承認手続を要します。加えて、既存投資家がいる段階では、投資契約・株主間契約上の先買権や事前承諾条項との調整が必要になります。

実務では、契約書上の譲渡先を「他の創業株主または取締役会が指定する第三者」のように幅を持たせておき、退任の経緯、株価、会社と創業者のキャッシュの状況に応じて、事後的に柔軟に決定できるようにする設計も紹介されています(同書80頁、86頁)。買取主体を契約締結時点で一つに固定すると、数年後に資金繰りの実態が変わったときに機能しなくなる可能性があります。

譲渡時の税務と価格

退任者の株式を低い価格で譲渡させる場合、誰から誰への譲渡かによって課税関係が変わります。同書は、個人間、個人から発行会社以外の法人へ、個人から発行会社自身へ、法人から個人へ、法人から法人へという五つのパターンを整理しています(同書83頁)。

個人間の譲渡で、時価より低い価格(たとえば取得時の価格)で譲渡した場合、譲渡する側の個人には原則として課税されず、譲り受ける個人に贈与税が課される可能性があります(同書83〜84頁)。株式の時価が大きく上昇していた場合、贈与税額が譲受人にとって重い負担になる可能性があります。

個人から法人(発行会社を含む)への譲渡では、時価の2分の1未満の価格で譲渡すると、譲渡する個人は時価で譲渡したものとみなされ、時価との差額に課税される可能性があります(所得税法59条、所得税法施行令169条)。同書は、時価1億円の株式を10万円で法人に譲渡した場合、譲渡する退任者側に約2,000万円の税負担が生じ得ると試算しています(同書85頁)。会社が引き取る場合には、単純な譲渡益にとどまらず、一部がみなし配当として課税される可能性もあり、受け取る側の法人にも受贈益として法人税等が課される可能性があります(同書85頁)。

この税務上の帰結は、株式の時価をどの時点でどう評価するかという前提に強く左右されます。優先株式による資金調達後は、普通株式と優先株式の価値は一般に大きく異なり、残余財産優先分配権が厚く付された優先株式で調達した直後は、普通株式の評価額がゼロに近いと評価される場合もあります(同書90頁)。また、退任時に契約に基づいて一定価格で株式を譲渡させる取り決め自体が、その株式の時価評価に影響し得るという考え方も紹介されていますが、この考え方が税務当局に確実に認められるかどうかは、個別の事案と当時の税制によって左右されます(同書89頁)。

これらはいずれも、刊行時点における税制と実務上の考え方の紹介であり、現在の税務当局の取扱いを保証するものではありません。退任者の株式を取得価格や額面で買い戻す設計を採用する場合、贈与税、みなし譲渡課税、みなし配当のいずれが問題になり得るかは、譲渡の当事者(個人か法人か)、株式の時価、取得時からの値上がり幅によって変わります。契約書に価格算定式を書き込む段階で、税理士への確認が必要になる時点を、退任事由が発生した時点まで先送りせず、契約設計の時点であらかじめ確認しておくことが実務上のリスクを減らします。

資金調達前に見直す項目

創業者間契約は、一度作った後もシード、プレシリーズA、シリーズAと進む中で、投資契約・株主間契約との整合を取り直す必要があります。

見直しの対象になりやすいのは、まず株主名簿と株券不発行の扱いです。創業初期に簡易な合意書だけで株式を発行していた場合、払込みの実在性や発行手続の適法性を、資金調達の法務デューデリジェンスで説明できる状態にしておく必要があります。次に、譲渡制限株式の譲渡承認手続です。定款上の譲渡制限は、望ましくない第三者が株主として入ってくることを防ぐ仕組みであり、退任した創業者が株式を持ち続けること自体を止める仕組みではありません。この点は創業者間契約は、仲が良いときにしか作れないでも述べたとおりです。

創業株主間契約と、これから締結する投資契約・株主間契約との関係も確認が必要です。創業者間契約で退任時の売却先を他の創業株主だけに限定していると、投資家が先買権や共同売却権との関係を気にする可能性があります。知的財産の帰属についても、共同創業者が個人で保有していたソースコードやデザインが、契約または職務著作の要件を通じて会社に帰属しているかを、シリーズA前に再確認しておく必要があります。シリーズA前後で見直すべき法務論点の全体像はシリーズA前に見直したい法務チェックリストにまとめています。

設立前に合意して書面に残す事項

共同創業の株式設計は、登記の翌日にはもう動かせない部分と、その後も調整できる部分に分かれます。動かせない部分から順に、設立前に次の事項を合意し、書面に残しておくことが実務上の出発点になります。

  • 創業者ごとの役割、フルタイム移行時期、拠出する知的財産・資金の内容
  • 初期の持分比率と、その比率を裏付ける前提事項
  • 退任事由の区分(地位喪失の有無、やむを得ない理由の有無、重大な背信行為の有無)
  • 退任事由ごとの株式返還・買取割合とベスティングスケジュール
  • 買取主体の優先順位(他の創業株主、会社、第三者)と、買取価格の算定方法
  • 会社が自己株式として取得する場合の手続(株主総会決議、分配可能額の確認)を誰が主導するか
  • 重要事項について創業者間で同意を要する範囲と、会社法上の機関決定との関係

これらは、資金調達を控えたタイミングで慌てて作るより、設立前後のまだ関係が良好な時期に、客観的な基準で合意しておく方が実務上進めやすくなります。

よくある質問

共同創業者の株式比率は50対50でも問題ありませんか?

比率そのものが常に誤りというわけではありません。重要なのは、比率を裏付ける役割分担やフルコミット時期が共有されているか、退任時の株式処理やベスティングが別途設計されているかです。対等な比率であっても、これらが整っていれば、比率だけを理由に直ちに機能不全を招くとは限りません。

米国のリバースベスティング条項を日本語に翻訳してそのまま契約書に使えますか?

そのまま使うことは想定されていません。米国のリバースベスティングはRestricted Stock Purchase Agreementなど米国会社法・証券法の枠組みを前提にした仕組みです。日本では、普通株式を発行したうえで創業株主間契約により退任時の譲渡義務を課す構成に置き換えて設計し直す必要があります。

退任した共同創業者の株式を、額面や取得価格で買い戻せますか?

契約上そのような合意をすること自体は可能ですが、常に問題なく買い戻せるとは限りません。取得後に企業価値が上昇している場合、譲渡の当事者が個人か法人か、価格が時価に対してどの程度かによって、贈与税やみなし譲渡課税など異なる課税関係が生じる可能性があります。契約設計の段階から税理士への確認を想定しておく必要があります。

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