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スタートアップ法務資金調達・投資契約

共同創業の株式比率とベスティングとは|退任時の買取条件まで含めた設計

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

共同創業では「株式の持分比率は何対何にすればよいか」が気になるところです。しかし、比率だけを先に決めて、途中で誰かが辞めたときにその株式をどう扱うかを決めないまま登記を済ませてしまうと、後から調整する手段は限られます。比率は最初の一歩に過ぎません。役割分担やフルタイムで関与する時期、意思決定のルール、退任時の株式処理までを一体で設計して初めて、創業者の持分は資本政策として機能します。

共同創業者同士でなぜ関係が良好なうちに合意を結んでおくべきかという論点は、創業者間契約は、仲が良いときにしか作れないで触れました。その創業者間契約の中核をなすのが、株式比率とベスティングの設計です。役割とフルコミットの時期を決め、退任事由に応じた買取主体・価格・手続を検討します。税務と将来の資金調達への影響まで確認しておくことで、投資家にも筋道の通った説明ができるようになります。

設立前の合意と役割表の整理

株式の比率を決める作業は、資本金の払込額を単に頭数で割るだけでは済みません。創業者の持分を均等にする場合でも、誰か一人に多く配分する場合でも、出資額と今後の貢献度合いに照らした合理的な理由が必要になるためです。比率そのものの数字よりも、その前提にある認識が共有されているかどうかが大切になります。

前提として整理しておくべき事柄は、拠出する出資金の額だけにとどまりません。誰がどの時期から専従となるのか、技術開発や営業、採用、資金調達の各領域を誰が担うのか、持ち寄る知的財産や既存の顧客関係は誰に帰属するのかといった役割表の整理です。特に見落とされやすいのがフルタイムへ移行するタイミングです。最初は副業として関わり数か月後に専従となる創業者と、初日からフルコミットで働く創業者の比率を同じにする場合、あらかじめ役割表を作っておかないと後から納得感のある説明が難しくなります。

CEOが過半数を持つかどうかも、事業と意思決定の体制に照らして判断します。技術が事業の核心であり技術責任者が事業を牽引する体制であれば、それに即した持分設計になります。対等な比率であっても、意思決定の仕組みや離脱時の株式処理が別途定められていれば、直ちに機能不全に陥るわけでもありません。比率の高低そのもの以上に、その比率を支える役割分担と、役割が変わったときに株式をどう動かすかについての事前の合意が実務上の分かれ目になります。

設立後に持分比率や条件を見直すことはできますが、当事者の合意や会社法上の手続、税務上の検証を伴うため負担が大きくなります。その負担を避けるためにも、設立前の段階で次の事項を話し合い、書面に残しておくことが実務上の出発点になります。

  • 創業者ごとの役割、専従への移行時期、拠出する知的財産や資金
  • 初期の持分比率と、その比率の根拠となる前提事項
  • 退任事由の区分(地位喪失、やむを得ない事由、重大な背信行為の有無)
  • 退任事由に応じた株式の返還・買取割合とベスティングのスケジュール
  • 買取主体の優先順位(他の創業株主、会社、第三者)と買取価格の算定方法
  • 会社が自己株式として取得する場合の機関決定や分配可能額の確認手順
  • 重要事項について創業者間の事前合意を要する範囲と、会社法上の機関決定との関係

株式の事前付与と段階的な付与

共同創業者に株式を渡す手法には、大きく分けて二つの型があります。会社設立時に発行済株式として先に交付し、途中で退任した際に契約に基づいて一定割合を返還・譲渡させる型と、新株予約権のように在籍期間に応じて権利を段階的に確定させていく型です。

前者の代表例が、米国シリコンバレーなどで用いられるリバースベスティング(reverse vesting)と呼ばれる仕組みです。日本の現行法にはかつての株式額面制度は存在せず、また米国のRestricted Stock(譲渡制限付株式)と完全に同等の制度があるわけでもありません。そのため日本の共同創業の実務では、普通株式を発行したうえで、創業株主間契約(覚書)によって「退任時には一定割合の株式を他の創業株主または会社へ譲渡する義務」を課す構成が考えられます。

例えば、退任時に本人が保持できる確定割合を、12か月以内は0%、12か月超24か月以内は25%、24か月超36か月以内は50%、36か月超48か月以内は75%、48か月超は100%とする設計が考えられます。この例では買戻しの対象となる未確定割合は、順に100%、75%、50%、25%、0%となります。確定割合と返還割合は裏表の関係になるため、期間の境界や端数の扱いまで契約書に定めておきます。この数値は法定の基準でも確定した慣行でもなく、仕組みをわかりやすく説明するための例示です。例えば1年経過時に25%を確定させる設計とは時期も割合も異なるため、契約ごとに予定するスケジュールを確かめます。また、取得価格での買戻し条項を置く場合でも、公序良俗や労働基準法上の賠償予定禁止との関係など、契約条項としての合理性が問われる余地があります。

後者の段階的に付与する設計としては、新株予約権を活用し、在籍期間に応じて行使できる個数が増えていく設計が挙げられます。新株予約権の場合も、退任したからといって当然に権利が消滅するわけではありません。発行要項において行使条件や取得条項、失効や消却の手続を整えておく必要があります。さらに、税制適格の要件や権利行使時の課税関係など、株式の直接発行とは異なる税務上の検討も欠かせません。

退任事由と買取条件

退任時の株式処理を定める際、Good leaver(円満退任者)やBad leaver(背信的退任者)といった抽象的な英語表記を置くだけでは、実際の退任局面で争いになりかねません。誰が円満退任にあたるかについて解釈の余地を残すと、かえって紛争の原因になります。

より厳しい条件を設けた別の設計例として、退任事由を客観的な事実に基づいて区分する手法があります。基本形として、代表取締役、取締役、従業員のいずれの地位も失った場合を退任と定め、原則として保有株式の大部分(直後保有株式数の10%を除く90%)を返還・譲渡の対象とする構成です。この退任について「やむを得ない理由」があると取締役会が認めた場合には、在籍期間に応じた計算式(保有株式数×在籍日数×5%÷365日。ただし保持できる上限・下限は保有株式数の10%以上20%以下)により保持できる株式数を算出し、保有株式数からその保持数を差し引いた残りを買い取る設計が考えられます。一方で、退任者が競合他社を設立したり競合へ就職したりした場合、会社法339条2項の「正当な理由」により解任された場合、または重大な契約違反があった場合には、保有株式の全部(100%)を譲渡対象とします。この設計では、4年間勤務しても保持できる株式は当初保有数の最大20%にとどまり、IPOやバイアウトまで在籍した場合に全株式を確定させると定める例です。IPO等の定義や、途中の一部売却の扱いも合意します。

この条項例を実際に採用できるかは、条件の合理性と実行可能性の検討が必要です。設計にあたっては、退任事由を「地位喪失の事実」「やむを得ない事情の有無」「重大な背信行為の有無」といった客観的な要素に切り分け、それぞれに応じた買取割合と価格を設計する点です。円満退任と背信的退任の区別を設けるのであれば、やむを得ない事情を誰がどのような基準で認定するのかを契約書の中で詰めておきます。

買取主体の選定と会社法上の手続

退任者の株式を誰が引き受けるかには、他の共同創業者、会社自身、第三者という選択肢があります。

他の共同創業者が個人として買い取る場合、まず資金の準備が壁になります。会社の価値が上がっていれば、個人が私費で買い取るための現金を工面できるとは限りません。また、非公開の譲渡制限株式である以上、他の創業株主が買い取る場合であっても定款上、株主間の譲渡にも承認が必要かを確認して手続を行います。

会社が自己株式として買い取る場合は、会社法上の財源規制と手続を遵守します。会社法461条により、株主に対して交付する金銭等の総額は効力発生日における分配可能額を超えてはならないとされています。利益剰余金が積み上がっていない初期のスタートアップでは、手元資金として現金があっても分配可能額が不足して自己株式を有償取得できない局面が生じます。分配可能額がゼロの場合に直ちに一切の取得が禁じられるわけではなく、無償取得などの例外や、資本金・準備金の減少手続を行って分配可能額を生じさせる方法もありますが、債権者保護手続など別の所定の手続を伴います。手続面でも、株主総会の決議によって取得枠(株式数、対価、1年以内の取得期間等)を定めるのが原則です(会社法156条1項)。特定の株主から取得する場合には、その特定の株主を指定する株主総会決議(同法160条1項)および特別決議(会社法309条2項2号。原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数の出席と、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成。定款により定足数を3分の1まで緩和したり賛成割合を引き上げたり可能)が必要です。他の株主には売主追加請求権が原則として認められますが(会社法160条2項・3項)、定款に別段の定めがある場合(同法164条1項)や市場価格のある株式を法定の方法で算定した価格以下で取得する場合(同法161条)などの例外があります。なお、売主となる特定の株主は原則として議決権を行使できません(同法160条4項。他の株主全員が行使できない場合等を除く)。

第三者へ譲渡させる場合も、譲渡制限株式としての会社の承認手続が必要です。加えて、すでに投資家が入っている段階であれば、投資契約や株主間契約に定められた先買権や事前承諾条項との整合性を確認します。

実務では、契約上の譲渡先を「他の創業株主または取締役会が指定する第三者」のように柔軟にしておき、退任時の経緯や株価、キャッシュの状況に応じて事後的に判断できるように設計することも考えられます。

譲渡時の税務と価格

退任者の株式を当初の取得価格などの低額で譲渡させる場合、取引の当事者が誰であるかによって税金の扱いが大きく変わります。

個人間で売買する場合、譲渡した個人には実際の対価と取得費に応じた株式等に係る譲渡所得の課税が生じ得ます。また、時価よりも著しく低い価額で取得した個人には、時価との差額について贈与税が課される可能性があります。著しく低い価額に該当するかどうかの判断には、法人への低額譲渡で用いられる「時価の2分の1」という一律の基準を使わず、個別事情に基づいて判断します(国税庁No.4423)。会社の時価が大きく跳ね上がっている場合、取得した個人にとって重い贈与税負担となるリスクがあります。

個人から法人(発行会社自身を含む)へ時価の2分の1未満の価格で低額譲渡した場合、譲渡した個人は時価で譲渡したものとみなされ、時価を総収入金額として取得費等を控除した譲渡所得等に課税されます(所得税法59条1項2号、同法施行令169条)。対価を時価の2分の1以上にしておけば形式上みなし譲渡課税は外れますが、同族会社の行為計算否認(同法157条)などの論点があるため当然に安全とは言い切れません。さらに、買い取る法人が発行会社自身(自己株式取得)である場合と他の法人である場合では税務の枠組みが異なります。自己株式取得として会社が買い取る場面では、原則として、交付金銭等が取得対象の株式に対応する資本金等の額を超える部分はみなし配当として扱い、それ以外の対価を基に譲渡所得等を計算します(所得税法25条1項5号)。取得方法による除外や低額譲渡の規定との関係も含め、具体的な税額を確認します。一方で発行会社以外の法人へ低額譲渡した場合は、その法人側で受贈益の課税が問題になります。

例えば時価1億円の株式を10万円で法人へ譲渡すると、実際の入金を大きく超える金額を基に課税されるおそれがあります。具体的な税額は、取得費等の条件を置いて試算します。こうした税務の結論は、株式の時価をどう算定するかという前提に左右されます。優先株式の発行実績がある場合でも、普通株式と優先株式では権利内容が異なるため、優先株式の単価を機械的に普通株式へ当てはめることはできません。また、創業株主間契約に低額での買取条項が存在すること自体が税務上の評価額に影響を与えるという主張もありますが、税務当局に認められるかは事案ごとに慎重な見極めを要します。退任時のトラブルを防ぐためにも、契約書に計算式を盛り込む段階で税理士への事前確認を行っておくことがリスクの軽減につながります。創業株主間契約の作成と買取条項の設計はスタートアップ法務・資金調達支援で扱っています。

よくある質問

共同創業者の株式比率は50対50でも問題ありませんか?

比率そのものが常に誤りというわけではありません。重要なのは、比率を裏付ける役割分担やフルコミット時期が共有されているか、退任時の株式処理やベスティングが別途設計されているかです。対等な比率であっても、これらが整っていれば、比率だけを理由に直ちに機能不全を招くとは限りません。

米国のリバースベスティング条項を日本語に翻訳してそのまま契約書に使えますか?

そのまま使うことは想定されていません。米国のリバースベスティングはRestricted Stock Purchase Agreementなど米国会社法・証券法の枠組みを前提にした仕組みです。日本では、普通株式を発行したうえで創業株主間契約により退任時の譲渡義務を課す構成に置き換えて設計し直す必要があります。

退任した共同創業者の株式を、額面や取得価格で買い戻せますか?

契約上そのような合意をすること自体は可能ですが、常に問題なく買い戻せるとは限りません。取得後に企業価値が上昇している場合、譲渡の当事者が個人か法人か、価格が時価に対してどの程度かによって、贈与税やみなし譲渡課税など異なる課税関係が生じる可能性があります。契約設計の段階から税理士への確認を想定しておく必要があります。

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