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法務アウトソーシング契約レビュー法務における生成AI活用法

社内向けリスク説明メモのたたき台を作る|生成AIの活用法

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

法務の仕事には、契約書の危ない条項を見つけることだけでなく、見つけたリスクを社内に分かりやすく伝える、という大切な役割があります。たとえば、業務委託契約のレビューで「損害賠償の上限が低すぎる」と気づいたとしても、それを事業部や決裁者が読んで判断できる言葉にしなければ、契約を結ぶべきかどうかの意思決定にはつながりません。

実務でよくあるのは、法務担当者の頭の中ではリスクが整理できているのに、メモにすると条項の引用ばかりになり、「で、結局どうすればいいの?」が伝わらない、という場面です。リスク説明メモは、専門家でない人に向けて「何が問題で、どの程度心配で、どう対応する選択肢があるか」を翻訳する文書だと考えています。

生成AIとは、ChatGPTやClaude、Geminiのように、文章で指示すると文章で答えてくれるサービスのことです。生成AIに任せるのは、契約上の論点を「リスク・影響・対応案」という意思決定用の文型へ移す下準備までです。どの選択肢を採るかは、取引額、相手方との関係、代替手段の有無を踏まえて人が決めます。

「リスクの洗い出し」と「伝え方」を分けて考える

リスクメモづくりは、(1) どんなリスクがあるかの洗い出しと、(2) それを社内にどう伝えるか、の2段階に分けると整理しやすいです。

生成AIは、この両方を手伝えます。(1) では、たとえばNDA(秘密保持契約、お互いの秘密情報を外に漏らさないと約束する契約)について「秘密情報の定義が広すぎないか」「目的外利用の禁止が抜けていないか」といった一般的な論点を挙げてもらえます。(2) では、「損害賠償の予定額が青天井(上限なし)です」といった硬い表現を、「万一トラブルが起きたとき、当社が支払う金額に上限がなく、損害額がそのまま請求され得る点に注意が必要です」のように、決裁者が読みやすい言葉へ言い換えてもらえます。

ただし、そのリスクを自社として受け入れるかどうかの判断は、必ず人が行う必要があります。AIは「一般的にこういうリスクがあります」とは言えても、「御社の今回の取引では受け入れてよい」とは判断できないからです。

決裁者が判断できる形にする

社内メモは、リスクを並べるだけでなく、「どうすればよいか」の選択肢まであると、判断につながります。私は「リスク」「影響」「対応案」の3点セットを基本形として使っています。

たとえば、SaaS利用規約(クラウドサービスを使うときの利用条件)のレビューで、サービス提供者がいつでも一方的にサービスを停止できる条項があったとします。このとき、

  • リスク:提供者の都合でサービスが停止され得る
  • 影響:業務システムとして使っている場合、停止中は業務が止まる
  • 対応案:(a) 事前通知期間と代替手段を求める、(b) 重要業務には使わない運用にする、(c) 低リスク用途に限り現状のまま受け入れる

という形に整理すると、決裁者は「では(a)で交渉しよう」「今回は(c)でよい」と判断しやすくなります。リスクの大きさによって対応案を複数並べておくのが、メモを実務で使えるものにするコツだと考えています。

立場によってリスクの見え方が変わる

同じ契約類型でも、自社が委託者(仕事を頼む側)なのか受託者(仕事を受ける側)なのかで、強調すべきリスクは変わります。

業務委託契約を例にすると、委託者側のメモでは「成果物の品質が保証されるか」「検収(納品物を確認して受け取る手続)の基準が明確か」「知的財産権が当社に移るか」が中心になりやすいです。逆に受託者側のメモでは「際限なく修正を求められないか」「損害賠償の範囲が広すぎないか」「再委託(下請に出すこと)が禁止されていないか」が中心になります。

AIにメモを頼むときも、自社の立場を最初に伝えると、論点がぶれにくくなります。立場を書かずに頼むと、当たり障りのない一般論が返ってきやすいです。

サンプル:リスクメモのたたき台(基本形)

次の契約書について、社内の決裁者向けのリスク説明メモのたたき台を作ってください。
当社の立場は「受託者(業務を受ける側)」です。

形式は、リスクごとに次の3点でお願いします。
(1) リスクの内容(専門用語は避け、一文で)
(2) 起きた場合の影響(当社の業務・金銭面で)
(3) 考えられる対応案(交渉する/運用で回避する/受け入れる、を複数併記)

重要度の高い順に並べてください。
これは社内検討用のたたき台で、最終判断は人が行います。
不確実な点や、契約書だけでは判断できない点は「要確認」と明記してください。

【ここに契約書または論点メモを貼り付け】

サンプル:決裁者への報告メールの形に整える(応用形)

たたき台ができたら、それを実際に送る報告の形に整えてもらうこともできます。

先ほど整理したリスクメモをもとに、事業部長に宛てた社内報告メールの下書きを作ってください。

・冒頭3行で「結論(締結を進めてよいか/要交渉か)」が分かるように
・本文は、特に重要なリスクを3つに絞って、リスク・影響・対応案の順で
・最後に「ご判断いただきたい点」を箇条書きで2〜3個

社内向けの文章なので、率直で構いません。
ただし、断定しすぎず、判断に必要な材料を示す書き方にしてください。

宛先や読み手(決裁者なのか、同じ法務の同僚なのか)を指定すると、表現の硬さや詳しさが変わります。社内向けと相手方向けでは目的が違うため、相手方に送る修正提案とは必ず分けて作るのが安全です。

よくある失敗

リスクメモづくりで起きやすい失敗を挙げます。

1つ目は、AIが挙げた一般的なリスクを、自社の状況に合うか確かめずにそのまま貼り付けてしまうことです。たとえば、数万円の単発契約に対して、基幹システム並みの重いリスク指摘が並ぶと、決裁者は「結局どれが重要なのか」が分からなくなります。重要度の優先順位は人が付け直すことが大切です。

2つ目は、AIが条項の内容を実際より重く(または軽く)描いてしまうのを見落とすことです。AIは「損害賠償の上限がない」と書いていても、契約書をよく読むと別の条項で上限が定められていることがあります。メモの記載は、必ず原文の条項と突き合わせて確認することが大切です。

3つ目は、対応案が「交渉する」だけで止まっていることです。相手方が応じない場合にどうするか(運用で回避する、低リスク用途に限定する、見送る)まで用意しておくと、メモが意思決定に役立ちます。

使うときの注意点

  • リスクの大きさや受け入れ可否の判断は、会社の事情を踏まえて人が行う前提です。AIの出力はたたき台にとどめ、最終的な結論は法務担当者が決める、という役割分担にしてください
  • AIが挙げるリスクは一般論です。自社の取引金額・期間・相手方との関係に合うかを必ず確認してください
  • メモに書いた条項の引用や数字は、原文と突き合わせて確認してください。AIは条番号や金額を取り違えることがあります
  • 入力する契約書や論点メモに含まれる秘密情報・個人情報の取扱いに注意してください。会社が許可したサービスか、入力内容がAIの学習に使われない設定かを確認することが大切です
  • 社内向けメモと相手方向けの提案文は、目的が違うため必ず分けて作成してください

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