契約書から期限・金額・義務を一覧で抜き出す|生成AIの便利な使い方
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
契約書から「いつまでに」「いくら」「誰が何をするか」を抜き出すときは、複数の条項を行き来することがあります。たとえばSaaS利用契約や業務委託契約では、契約期間や更新拒絶の期日が第2条、委託料の金額と支払期日が第5条、成果物の検収期間が第8条といったように、主要な条件が文書全体に散らばっています。更新期日を見落として不要な契約が自動更新されたり、支払期日の遅れによって遅延損害金が発生したりする事態は、日常の法務やバックオフィスの現場で最も避けたい問題の一つです。
担当部署に期限を知らせるため、まず契約書から管理すべき項目を抜き出します。その内容を確認して台帳へ入れ、社内の担当者と対応予定を決めていきます。
ChatGPT、Claude、Geminiなどに契約書を読み込ませ、必要な項目の一覧を作らせる方法があります。ただし、指示文を工夫しても、数字や条件の読み違いは残り得ます。AIに骨格の一覧を作成させ、人間が締結済みの契約書と有効な変更合意と照らし合わせて確認する役割分担が基本となります。
散在する重要項目の抽出と人の照合
契約書から情報を抜き出す際は、項目ごとの内容だけでなく、根拠となる条番号や原文の文言を併記させます。根拠条文が示されていれば、抽出された期限や金額が正しいかどうかを、原本の該当箇所を開いて即座に突き合わせることができます。条番号が抜けていると、抜き出された記述が契約全体のどこに基づいているのかを確かめるために、文書全体を再読する負担が生じます。
見つからなかった項目は空欄にせず、「記載なし」と表示するよう指示します。たとえば損害賠償額の上限について「記載なし」と出力されれば、契約上あらかじめ上限が定められていないのか、それとも抽出漏れが生じているのかを切り分けて検討できます。「記載なし」と出ていても、見落とした可能性は残ります。別紙や変更合意を含む契約全体を確かめて、実際に定めがないのかを判断します。
契約管理に役立つ指示プロンプト
まずは、主要な契約条件を漏れなく抜き出し、根拠条文を添えた表形式で整理させる基本プロンプトです。
次の契約書から、以下の項目を抜き出し、表にまとめてください。各項目には、根拠となる条番号を併記してください。記載が見当たらない項目は「記載なし」とし、原文にない内容は推測で補わないでください。
- 契約期間と更新の条件
- 支払金額と支払期限
- 当事者それぞれの主な義務
- 解約・中途解除の条件(予告期間を含む)
- 損害賠償に関する定め(範囲・上限の有無)【ここに契約書を貼り付け(社名・個人名は伏せる)】
契約締結後の期限管理や更新通知のスケジュール管理を目的とする場合は、期限の起算点や対応当事者に焦点を絞った形式で出力させます。
次の契約書から、期限・更新・通知に関する事項だけを抜き出し、対応スケジュールの形で整理してください。出力は、対応事項 / 期限・起算点 / 対応する当事者 / 根拠条番号 / 備考 の表形式でお願いします。
- 「契約満了日の3か月前まで」のように、起算点と期間が分かる形で記載してください
- 自動更新の有無と、更新を止める場合の手続も項目に含めてください
- 原文から読み取れない期限は推測せず、「要確認」と記載してください【ここに契約書を貼り付け(社名・個人名は伏せる)】
このスケジュール形式を活用する際、契約上の権利義務を負う当事者と、自社内で実際にタスクを担当する実務担当者は明確に区別します。契約書だけを渡した場合、社内担当者までは分からないことがあります。担当者を推測させず、社内で決めた内容を台帳に登録します。
抽出実務で直面しやすい盲点
第1に、条番号や日付、金額の取り違えです。「第5条」を「第15条」と誤読したり、「月末締め翌月末払い」を「当月末払い」と取り違えたりすることがあります。また、契約書本文には「詳細は別紙記載のとおり」と書かれているにもかかわらず、別紙や別表をAIに読み込ませていない場合、肝心の金額や業務仕様が抜け落ちた一覧が作られてしまいます。締結済みの最新契約書や個別覚書、別紙一式が揃っているかを確認したうえで作業に入ることが大切です。
第2に、条件の補完による誤認です。契約書上は「期間満了前に協議のうえ更新を決定する」と合意されているに過ぎない条項を、AIが一般的な契約類型を推測して「1年ごとの自動更新」と要約してしまうケースがあります。協議による更新と自動更新は法的な性質が大きく異なります。同様に、30日前の解約予告通知と是正猶予期間の定めなども混同しやすいため、原文の文言そのものを確かめることが大切です。
第3に、起算点と期間計算の誤解です。「満了の30日前までに通知」とあれば、まず満了日を確定し、期間の計算方法を確認します。「30日」と「1か月」、「日」と「営業日」を置き換えず、通知方法や到達を必要とする期限かどうかも、契約と適用法令に照らして確かめます。確定していない日付を推測で埋めるのではなく、不明な点は「要確認」として残し、準拠法や契約条項に沿って人が最終確認を行います。また、秘密保持の観点からも、企業が利用を承認したセキュアな環境で運用することが欠かせません。
- 抜き出された期限・金額・義務と原本条項の突き合わせ確認
- 別紙や変更覚書を含めた契約書一式の確認と「記載なし」の再検証
- 契約上の義務者と社内の実務担当者の明確な区分
- 起算点、期間の計算方法、通知の到達要件を確認して期限を登録する