ディープフェイク・なりすまし広告の法的リスクと広報法務の初動
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
生成AIの普及により、人物の顔や声、話し方を模倣したコンテンツを作ることが容易になっています。有名人や経営者、医師、弁護士になりすました広告やSNS投稿も問題になっており、スタートアップでも、広報や採用、SNS運用の中で、ディープフェイクやなりすましのリスクを意識しておきます。これは、単に悪質広告に巻き込まれないための話ではありません。自社が広告素材を作る側として、他人の肖像や氏名、肩書をどこまで使えるのかを確認する問題でもあります。
他人の顔・声・氏名を広告に使うリスク
広告で他人の顔や声、肩書を使う場合、本人の承諾が必要になることが多いです。なりすまされた人物が推薦しているかのように見せる表示は景品表示法上の誤認リスクがあり、本人の顔や声を無断で使うこと自体が肖像権・パブリシティ権の侵害になり得ます。あわせて、名誉・信用の毀損や、著作権・商標の侵害が問題になる場合もあります。また、企業名やロゴをかたるタイプのなりすましは、周知・著名な商品等表示の冒用として、不正競争防止法に基づく差止めや損害賠償の対象になり得ます。
AIで生成した人物であっても、実在の人物に似ている場合には注意が要ります。特に、著名人や医師、投資家に似せた広告は、消費者が本人の推薦や関与があると誤認する可能性があります。広告表現として、第三者の信用を借りる場合には、本人承諾や表示内容、契約範囲を確認します。
なりすまし被害を受けた場合の初動
自社や代表者がなりすまし広告・SNS投稿の被害を受けることもあります。この場合、まず証拠保全が肝心です。URLやスクリーンショット、広告ID、表示日時、誘導先といった情報を保存します。そのうえで、プラットフォームへの削除申請や広告主情報の確認、警察への相談、公式サイトでの注意喚起を検討します。削除依頼を急ぐことは大切ですが、証拠を残さずに削除されると、後から追跡が難しくなることがあります。
広告代理店・制作会社との契約で決める
ディープフェイク・なりすまし広告のリスクは、広告代理店や制作会社との契約でも管理します。広告素材の権利処理や、AI生成素材の利用可否、違反時の責任を契約で定めておきます。広告代理店がAIツールで素材を作る場合、どのツールを使うのか、生成物に第三者権利侵害リスクがないかを確認しておきます。特に、金融や医療、投資領域では、権威ある人物を使った広告が消費者に大きな影響を与えるため、慎重な管理が要ります。
社内広報でもAI利用ルールが必要である
社内広報や採用広報でも、AI生成画像やAI音声を使うことがあります。たとえば、社員風の人物画像や、代表者の音声合成、イベント写真風の画像です。これらを実在の人物や事実のように見せると、誤認を生む可能性があります。AIで作った素材であることを表示するか、実在の人物と誤解されない表現にするかを決めておきます。広報法務では、著作権だけでなく、信頼を損なわない情報発信かどうかを見ることが大切です。