スタートアップの法務顧問|インハウス採用前に外部法務体制で整えること
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
事業が成長するにつれて、社内弁護士や法務専任担当者の採用を検討する局面が訪れます。事業部門からの契約書レビュー依頼が増加し、資金調達や利用規約の改定、知的財産管理など、対応を要する法務領域が広がるためです。
もっとも、担当者を採用しただけで自然に法務業務が軌道に乗るわけではありません。採用に先立って外部の法務顧問とともに、相談の受付方法と審査基準を決め、重要書類の保管方法や役割分担も取り決めておくと、入社した担当者が過去の判断経緯をゼロから調べ直す負担を減らせる場合があります。LegalAgentのスタートアップ法務顧問では、日常的な契約書の確認だけでなく、資金調達、利用規約、労務管理まで、成長段階に応じた支援を行っています。
法務相談の受付窓口の整理
第一に整えておきたいのが、法務相談を受け付ける仕組みです。誰が、どのような案件を、どの段階で相談するのかがあやふやなままだと、専任者が入社しても業務の優先順位をつけにくくなります。
契約審査の依頼書式と、緊急案件への対応手順を定めます。事業部門が記入する取引背景や、資金調達・取締役会の相談窓口も決めておくと、依頼を受けた人が事情を把握しやすくなります。
外部弁護士を活用している段階から、依頼用フォームや確認チェックリストを運用することは十分に可能です。採用前に入口を整えておくことで、専任者の入社後も既存の手順をもとに引き継げます。
契約審査の判断基準の蓄積
採用前の準備として特に有益なのが、契約審査における社内基準を文章にして残すことです。秘密保持契約や業務委託契約といった頻出する契約類型について、会社として譲れない条項と許容できる範囲を明文化しておきます。
損害賠償額の上限設定、知的財産の帰属条項、秘密保持義務の有効期間などが代表的な検討事項です。過去に外部弁護士から提示された助言や修正理由を整理し、会社としての基本姿勢を取りまとめておけば、着任した担当者が会社の方針を把握しやすくなります。過去の修正履歴がチャットツールや個人のメールボックスに散らばったままだと、後任者が自社の法的リスク許容度を把握するまでに過去の経緯を調べ直す時間がかかります。
重要書類の集約とデータルーム化
社内の法務体制を整えるにあたっては、基礎的な重要書類をまとめておきます。定款や商業登記事項証明書に加え、株主名簿や株主総会議事録も確認します。資金調達やM&Aの法務DDで開示を求められる資料が対象です。
これらの書類を平時からデータルーム形式で分類保管しておけば、新任担当者の状況把握に加えて、投資家対応や将来の監査対応にもそのまま活用できます。単に共有フォルダを新設するだけで済ませず、最新版の所在、更新権限を持つ担当者、閲覧範囲の管理ルールまで定めておきます。
外部弁護士との役割分担
専任の法務担当者を採用した後も、社内の人員だけで全領域を抱え込む必要はありません。内製化する業務と外部弁護士へ委ねる領域の範囲を決めておくと、相談先に迷いにくくなります。日常的な契約審査や事業部門からの質問対応は社内担当者が引き受け、資金調達、組織再編、訴訟対応といった高度な専門知識を要する案件は外部弁護士と連携して進める形が現実的です。
採用前から外部弁護士との協業体制を築いておけば、担当者の入社後も業務を引き継ぎやすくなります。過去の相談履歴や契約方針を共有できる環境を維持しておくことが望ましいと考えています。
生成AIを活用した法務体制の設計
これから法務体制を立ち上げる企業は、当初から生成AIの利用を前提とした業務設計を試みることもできます。契約書の要約作成、一次的な論点抽出、過去事例の検索といった定型的な下準備をAIに任せ、人間が最終的な法的判断を下す運用がその一例です。
ただし、業務の依頼窓口や審査基準が曖昧なままAIを導入しても、誰が何を確認するか分からない状態が残ることがあります。AIの出力を人が確認し、会社の状況を踏まえて判断する手順を決めます。
LegalAgentでは、採用前の企業に対し、法務の受付方法や審査基準を整える支援を行っています。採用前に相談履歴や資料の保管方法を整えておけば、入社後の担当者が日常業務に取り組みやすくなると考えています。