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予測市場の適法性|Polymarket・Kalshi、賭博罪・金融規制

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

選挙の勝者や政策金利の変更、スポーツ大会の結果などについて、「起こる」と「起こらない」の持分を売買し、結果が確定したときに精算する。予測市場は、人々の予測を集計する仕組みとしても、短期の投機商品としても利用されています。米国では2026年2月に商品先物取引委員会(CFTC)が取引所の規律執行に関する注意喚起を公表し、4月には州当局を提訴しました。取引所の監督と州の賭博規制が交差する領域です。

日本で同じサービスを始める場合、参加者が金銭などを拠出し、偶然の結果によって一方が利益を得て他方が損失を負う以上、検討は刑法の賭博罪から始まります。米国で金融商品として扱われている実例だけを持ち込んでも、日本法上の評価を基礎付ける根拠にはならないためです。刑法上の評価とあわせ、対象指標と決済手段、顧客資産の管理方法に応じて、金融商品取引法や資金決済法の適用も確認します。

予測市場で売買されるもの

典型的な予測市場では、将来の出来事について複数の選択肢を設け、参加者が各選択肢に対応する持分を購入します。結果が確定すると、的中した持分には一定額が支払われ、外れた持分は価値を失うか、それに近い状態になります。取引価格が市場参加者の予測を反映して動くため、決済前に持分を売却できるサービスもあります。

この仕組みは、回答を集めるアンケートとは異なります。参加者は単に意見を寄せるだけでなく、自らの資金を失うリスクを引き受けます。損害保険が被保険利益を前提に事故による損害を填補するのに対し、予測市場では、選挙結果や他社の業績のように参加者自身の損害と結び付かない出来事も取引の対象になります。ここでは損害保険との違いを述べており、定額給付を行う生命保険には別の検討が伴います。

サービスの名称が「マーケット」「情報取引所」「イベント・コントラクト」のいずれであっても、日本法上の評価は取引の実態に基づいて行われます。無料ポイントだけで順位を競うサービス、現金を拠出して結果に応じた払戻しを受けるサービス、固定額の調査謝礼を受けるサービスでは、同じ予測の機能を使っていても法的な構造が異なります。

中心論点となる賭博罪

刑法185条は、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と定めています。単に反復しているだけでなく賭博の常習性が認められる場合には常習賭博罪が、賭博場を開張し又は博徒を結合して利益を図った場合には賭博場開張等図利罪が問題となります。後者の法定刑は3月以上5年以下の拘禁刑です(186条2項)。

条文には「賭博」の定義が置かれていませんが、一般に、偶然の勝敗によって財物又は財産上の利益の得喪を争う行為をいうと解されています。「偶然」とは、当事者が結果を確実に予見することも支配することもできない状態をいい、統計や専門知識によって的中率を高められる場合であっても、結果を左右する偶然の要素が残れば足りると解されています。

もう一つの要件である「得喪を争う」は、当事者が互いに財産を失う危険を負い、その勝敗に応じて財産上の利益が移転する関係を指すと解されています。185条ただし書の「一時の娯楽に供する物」は、その場で消費される飲食物などを念頭に置いた例外規定です。

富くじ罪との境界

参加者同士が相対して損得を争う構造が弱く、運営会社が代金を集め、偶然の結果によって購入者へ不均等な利益を分配する仕組みであれば、刑法187条の富くじ罪も視野に入ります。同条1項は、富くじを発売した者を2年以下の拘禁刑又は150万円以下の罰金に処すると定めています。

富くじは、発売者が対価を得て札などを販売し、偶然の方法によって購入者間に不均等な財産的利益を分配するものと説明されます。公営の宝くじは、当せん金付証票法という特別法に基づいて発売されるため適法に運営されています。民間の事業者が利用規約を整えるだけで同じ例外を作り出すことはできません。

米国のイベント・コントラクトとの制度差

米国では、一定のイベント・コントラクトが商品取引所法上のデリバティブとしてCFTCの監督下で提供されています。もっとも、すべてのテーマを自由に上場できるとは限りません。商品取引所法には、違法行為や暴力・テロ、戦争や賭博に関する契約などを公益に反すると判断して禁止できる枠組みがあります。州の賭博規制との境界についても争いが続いています。

2026年2月25日、CFTCは、Kalshiが自ら行った二件の規律執行を取り上げて、非公開情報の利用や相場操縦等に関する注意喚起を公表しました。この二件の処分主体はKalshiであり、CFTCはその事例を通じて注意を呼びかけています。さらに同年4月には、Wisconsin州がKalshi、Polymarketなどを州賭博法で規制しようとしたことに対し、連邦の商品先物規制が優先するとしてCFTC自身が提訴しました。連邦法の優先は、この訴訟でCFTCが主張した立場として区別します。

詳しくはCFTCの2026年2月25日公表資料及び同年4月28日公表資料で確認できます。さらにCFTCの2026年6月10日公表資料は、個人の活動に結び付く契約の範囲や公益に反する契約の審査に関する規則案を示しました。この公表は意見募集のための提案であり、それ自体を施行済みのルールとして扱うことはできません。

日本の金融商品取引法にもデリバティブ取引の定義がありますが、金利や通貨、金融商品、金融指標などを基礎とする取引を法定の類型に沿って捉える制度です。同法2条の金融指標には気象に関する数値も含まれ、信用状態に係る事由や法令で定める事由に連動する取引類型もあります。対象は金融市場の価格に限定されません。ある出来事に連動して金銭を精算するという経済的な類似点だけで、あらゆる予測市場が金融商品取引法上のデリバティブになるとは限りません。金融規制の対象に入るかという点と、適法な金融取引として刑法上の賭博性を否定できるかという評価は、関係法令を踏まえて個別に確認します。金融商品に似た名称だけで賭博規制を免れることはできません。他方、関係法令に従う適法なデリバティブ取引には、その制度上の根拠を踏まえた評価が伴います。外国で登録された市場であっても、日本国内での勧誘や取引には日本法の検討がそのまま必要になります。

日本向けサービスで分かれる評価

日本で予測市場を提供する場面では、参加者が何を拠出し、外れたときに何を失い、的中者への支払原資を誰が負担するかを整理することが出発点です。選挙や試合の結果は参加者が支配できないため偶然性は肯定されやすく、評価の分かれ目となるのは得喪の側です。現金や換金可能な暗号資産を参加者から集め、外れ側の損失を的中側へ移す構造は、賭博罪の「得喪を争う」関係に近い評価を受けます。運営会社が取引ごとに手数料だけを受け取り、参加者同士の注文を対応させる方式であっても、場を提供して利益を得ている事実は残ります。自ら相手方となるか注文を媒介するかは運営会社の関与の度合いを変えるにとどまり、参加者間の賭博性を解消する理由にはなりません。185条ただし書に依拠する道も限られると考えられます。現金、暗号資産、換金できるポイントを継続的に投じるサービスを、その場で消費される「一時の娯楽に供する物」を賭けたと説明することは困難なためです。

富くじ罪との関係では、注文状況に応じて価格が動き、満期前に売却できる点が伝統的な富くじと異なります。しかし、運営会社が固定価格で参加権を販売し、結果に応じて自社から賞金を支払う設計に寄せるほど、参加者同士の取引市場という説明は成り立ちにくくなります。賭博罪と富くじ罪のどちらに抵触し得るかは、参加の対価と利益分配の仕組みによって変わります。参加者同士が財産の得喪を争う関係や、対価を得て偶然の利益を分配する富くじの構造があるかを、それぞれの要件に沿って確かめます。無料で参加できる懸賞でも偶然による賞品の分配はあり得るため、抽選や当選の存在だけでは判断できません。

これに対し、参加者が財産を拠出せず、回答の的中・不的中にかかわらず運営会社が調査費等から一定の謝礼を支払う調査型では、参加者側の財産喪失がありません。社内の需要予測や研究目的で、換金できないポイントを付与する仕組みも、賞品や有償サービスの利用権と交換できるかなど、財産上の利益への該当性を個別に確かめる余地はあるものの、有償参加型とは明確に距離があります(懸賞を設ける場合の景品表示法の確認は別途生じます)。ただし、無料参加を掲げながら、有料会員だけが高額賞品の対象になる、ポイント購入額に応じて予測回数が増えるといった設計では、支払と結果が再び結び付きます。

対象が金融商品の相場や金利・為替、気象その他の法定の金融指標等であり、差金決済や証拠金取引の構造を採る場合には、金融商品取引法上のデリバティブ取引や業規制を別途確認します。顧客から法定通貨を預かり送金する機能、暗号資産を交換・管理する機能、独自の有償ポイントを発行する機能を組み込めば、銀行法や資金決済法上の資金移動業・暗号資産交換業、前払式支払手段等の規制が関わってきます。ステーブルコインも名称だけで暗号資産と同一視せず、電子決済手段など該当する制度を確認します。ここでは「暗号資産で決済するから賭博ではない」という整理は成り立ちません。暗号資産も財産上の利益に当たり得るからです。

海外サービスを日本語化し、日本居住者向けに広告を出し、国内のアフィリエイターを使う場合には、どこでサービスが提供され、誰が勧誘し、誰が顧客資産を受け取るかを契約と実態の両方から確認します。アクセス遮断の有無に加えて、日本語サポートや日本円換算表示、国内向けキャンペーンなども、日本市場を対象としているかを示す主要な事情になります。

オンラインオリパと同じく、偶然による結果と財産の移転が接するビジネスですが、予測市場でもランダム型物販でも、商品売買という外形の有無だけで適法性を決めることはできません。ランダム型物販との違いは、オンラインオリパの法規制で扱っています。

資金と権利の流れから始める検討

予測市場やイベント・コントラクトの相談では、画面案より先に、参加者と運営会社やマーケットメーカー、決済事業者の間で資金と権利がどう動くかを確認しています。LegalAgentでは、刑法上のスキーム評価に加え、金融商品取引法や資金決済法の該当性、利用規約と広告表示までを横断して確認を行っています。関連する支援内容は、FinTech・資金決済法務Web3・ブロックチェーン法務スタートアップ法務・資金調達支援法務アウトソーシングをご覧ください。

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