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譲渡禁止条項とは?契約上の地位・債権譲渡・事業譲渡で確認すべきこと

こんにちは!Legal Agent 代表弁護士の朝戸です。

譲渡禁止条項は、多くの契約書に入っている一般条項です。よくある条項なので、レビューで軽く扱われることがあります。

しかし、譲渡禁止条項は、M&A、事業譲渡、グループ再編、資金調達、債権譲渡、ファクタリング、アウトソーシング、再委託など、事業上の重要な場面で効いてくる条項です。広く書きすぎると事業展開を制限し、狭く書きすぎると相手方のコントロールが効かなくなることがあります。

この記事では、譲渡禁止条項とは何か、契約上の地位、債権譲渡、事業譲渡との関係で確認すべきポイントを整理します。

この記事で分かること

この記事では、このテーマについて、基本的な意味、実務で問題になりやすい場面、契約書で確認すべきポイント、AIで一次整理するときに人が見落としてはいけない点を整理します。定義から入り、次にチェックリストとして確認できる順序にしています

最初に確認するポイント

  • どの取引、手続、社内運用でこの論点が問題になるのか
  • 自社が相手方に何を求め、相手方から何を求められているのか
  • 契約書、発注書、規約、社内承認、実際の運用が同じ前提になっているか
  • 条項だけでなく、証拠として残る資料や連絡経路まで整理されているか
  • AIの指摘をそのまま採用せず、事業上の優先順位とリスク許容度に照らして判断できるか

譲渡禁止条項とは、契約上の地位や権利義務の移転を制限する条項である

譲渡禁止条項とは、契約当事者が、相手方の承諾なく、契約上の地位や契約に基づく権利義務を第三者に譲渡することを制限する条項です。

典型的には、次のような行為が対象になります。

  • 契約上の地位の移転
  • 契約上の権利の譲渡
  • 契約上の義務の移転
  • 債権譲渡
  • 担保提供
  • 事業譲渡や会社分割に伴う移転

譲渡禁止条項の目的は、相手方が知らない第三者に契約関係が移ることを防ぐことです。契約は、相手方の信用、能力、体制、事業内容を前提に締結することが多いためです。

ただし、あまりに広い譲渡禁止条項は、自社の資金調達、グループ再編、M&A、債権流動化、外部委託に支障を与える可能性があります。

契約上の地位の移転と債権譲渡を分けて考える

譲渡禁止条項では、契約上の地位の移転と債権譲渡を分けて考えることが重要です。

契約上の地位の移転とは、契約から生じる権利義務全体を第三者に移すことです。たとえば、サービス提供者が契約上の提供者としての地位を別会社に移す場合などです。

一方、債権譲渡とは、契約に基づく金銭債権などを第三者に譲渡することです。たとえば、売掛金を金融機関やファクタリング会社に譲渡する場合などです。

この2つは性質が違います。契約上の地位が移ると、相手方にとって契約相手そのものが変わります。債権譲渡では、支払先や債権回収の相手が変わることがありますが、契約上のサービス提供主体は変わらない場合もあります。

レビューでは、次の点を確認します。

  • 契約上の地位の移転を禁止しているか
  • 権利義務の譲渡を禁止しているか
  • 債権譲渡も禁止しているか
  • 担保提供も禁止しているか
  • 事前の書面承諾が必要か
  • 承諾を不合理に拒めない規定があるか

特に、スタートアップや資金調達を行う会社では、債権譲渡禁止や担保提供禁止が資金繰りに影響することがあります。

M&A・事業譲渡・組織再編で問題になりやすい

譲渡禁止条項は、M&Aや組織再編の場面で問題になりやすい条項です。

株式譲渡では、契約当事者そのものは変わらないことが多いですが、チェンジオブコントロール条項があれば、支配権変更が問題になります。事業譲渡や会社分割では、契約上の地位や契約に基づく権利義務の移転が問題になります。

譲渡禁止条項がある場合、重要契約について相手方の承諾が必要になることがあります。承諾取得が漏れると、取引継続やクロージングに影響することがあります。

確認すべき点は、次のとおりです。

  • 事業譲渡や会社分割に適用されるか
  • 株式譲渡や支配権変更にも適用されるか
  • グループ会社への移転は許されるか
  • 承諾取得の手続と期間
  • 承諾が得られない場合の影響
  • 契約解除事由にもなっているか

M&Aを見据える会社では、普段から重要契約の譲渡禁止条項を把握しておくことが重要です。法務DDで初めて気付くと、対応がかなり重くなります。

グループ会社・再委託・外部委託との関係

譲渡禁止条項は、グループ会社や外部委託との関係でも問題になります。

たとえば、契約上の業務をグループ会社に移す、カスタマーサポートを外部委託する、システム運用を別会社に移管する、といった場合に、譲渡禁止条項や再委託禁止条項に抵触しないかを確認する必要があります。

譲渡禁止条項と再委託条項は別の条項ですが、実務では一緒に確認することが多いです。

確認すべき点は、次のとおりです。

  • グループ会社への移管ができるか
  • 再委託ができるか
  • 再委託と契約上の地位移転の違いが整理されているか
  • クラウド事業者や外部ツール利用が許されるか
  • 承諾が必要な場合の手続
  • 承諾なく移転・再委託した場合の効果

事業が成長すると、契約締結時には想定していなかった運用変更が起きます。譲渡禁止条項は、将来の事業展開も踏まえて見る必要があります。

譲渡禁止条項のレビューで調整すること

譲渡禁止条項をレビューするときは、一律に広く禁止すればよいわけではありません。

相手方の信用を重視する契約では、契約上の地位の移転について事前承諾を求めることが合理的です。一方で、金銭債権の譲渡やグループ会社への移管まで一律に禁止すると、事業運営に支障が出ることがあります。

調整案としては、次のようなものがあります。

  • 契約上の地位の移転は事前承諾制にする
  • 債権譲渡は通知制または一定範囲で許容する
  • グループ会社への移転を例外とする
  • M&Aや組織再編時の例外を設ける
  • 承諾を不合理に拒否しない条項を入れる
  • 相手方に重大な不利益がある場合は拒否できる形にする

譲渡禁止条項は、相手方を固定するための条項であると同時に、自社の将来の自由度を左右する条項です。

チェンジオブコントロール条項との違い

譲渡禁止条項と似たものに、チェンジオブコントロール条項があります。

譲渡禁止条項は、契約上の地位や権利義務の移転を制限する条項です。一方、チェンジオブコントロール条項は、契約当事者の支配権が変わった場合に、通知、承諾、解除などを認める条項です。

株式譲渡によるM&Aでは、契約当事者自体は変わらないことが多いです。そのため、譲渡禁止条項だけでは問題にならないように見えることがあります。しかし、チェンジオブコントロール条項がある場合には、株主構成の変更が契約上の問題になります。

確認すべき点は、次のとおりです。

  • 支配権変更が通知事由になっているか
  • 支配権変更が承諾事由になっているか
  • 支配権変更が解除事由になっているか
  • 上場、資金調達、M&Aを例外にしているか
  • 競合他社による買収だけを対象にしているか

スタートアップやM&Aを検討する会社では、譲渡禁止条項だけでなく、チェンジオブコントロール条項もセットで確認する必要があります。

相手方ひな形でよくある修正ポイント

相手方ひな形では、譲渡禁止条項が非常に広く書かれていることがあります。

たとえば、契約上の地位、権利義務、債権、債務、担保提供、委託先利用、組織再編、事業譲渡をすべて一律に事前承諾制にしている場合があります。このような条項は、相手方の立場では合理的でも、自社にとっては重すぎることがあります。

修正を検討するポイントは、次のとおりです。

  • 金銭債権の譲渡を例外にする
  • グループ会社への移転を例外にする
  • 組織再編やM&Aを通知制にする
  • 承諾を不合理に拒否しない条項を入れる
  • 事前承諾が必要な対象を契約上の地位に限定する
  • 再委託条項との重複を整理する

譲渡禁止条項は、将来の事業運営に効いてくる条項です。契約締結時には問題が見えにくくても、資金調達やM&Aの場面で大きな制約になることがあります。

よくある失敗

譲渡禁止条項でよくある失敗は、締結時には問題ないと考えて、その後の事業変化を想定しないことです。

創業初期には、契約上の地位を移す予定も、債権譲渡をする予定も、M&Aをする予定もないかもしれません。しかし、事業が成長すると、グループ会社への移管、事業譲渡、会社分割、資金調達、ファクタリング、債権担保、M&Aが現実的になります。

そのときに、主要契約の譲渡禁止条項が広すぎると、相手方承諾の取得が必要になり、スケジュールや交渉に影響します。相手方が承諾しなければ、取引を移せない、クロージング条件を満たせない、資金調達スキームを使えない、ということもあります。

譲渡禁止条項は、いま問題があるかだけでなく、将来の事業展開に耐えるかを見る条項です。

特に、スタートアップ、SaaS、ライセンス、販売代理、重要顧客との契約では、将来の組織再編やM&Aも視野に入れて確認した方がよいです。

契約台帳で把握しておきたい項目

譲渡禁止条項は、契約台帳でも把握しておくと便利です。

重要契約について、契約上の地位移転の制限、債権譲渡禁止、チェンジオブコントロール、事業譲渡時の承諾要否を一覧化しておくと、M&Aや資金調達の場面で対応しやすくなります。

契約台帳に入れておきたい項目は、次のとおりです。

  • 譲渡禁止条項の有無
  • 債権譲渡禁止の有無
  • グループ会社例外の有無
  • 組織再編例外の有無
  • チェンジオブコントロール条項の有無
  • 承諾取得先と通知期限

譲渡禁止条項は、普段は目立ちません。しかし重要局面では一気に確認が必要になります。平時から台帳化しておくと、事業判断が速くなります。

特に、重要顧客、主要仕入先、基幹システム、ライセンス契約、販売代理店契約については、譲渡禁止条項を早めに把握しておく価値があります。資金調達やM&Aの直前に初めて確認すると、承諾取得や契約変更の時間が足りなくなることがあります。

重要契約ほど、平時の整理がそのまま有事の対応速度に表れます。

AIレビューでは、M&Aや組織再編の前提を入れる

譲渡禁止条項は、AIで抽出しやすい条項です。ただし、単に「譲渡禁止条項があります」と出力されるだけでは十分ではありません。

重要なのは、その譲渡禁止条項が、将来のM&A、事業譲渡、会社分割、グループ再編、資金調達、債権流動化、業務委託先変更にどう影響するかです。AIにレビューさせる場合は、現在の取引だけでなく、将来想定される取引も前提として入れる必要があります。

たとえば、スタートアップであれば、資金調達、M&A、事業譲渡、グループ会社化の可能性があります。SaaS企業であれば、利用規約、販売代理店契約、クラウド利用契約、データ処理契約に譲渡禁止条項が入っていることがあります。これらを将来の出口や組織再編と切り離して読むと、重要な制約を見落とします。

AIに確認させる場合は、次の観点を含めるとよいです。

  • 契約上の地位の譲渡制限
  • 債権譲渡の制限
  • 事業譲渡や会社分割の扱い
  • 親会社・子会社・関連会社への移転可否
  • M&A時の承諾取得の要否
  • 承諾を拒否できる理由
  • 承諾取得に必要な期間

譲渡禁止条項は、平時には目立ちません。しかし、資金調達やM&Aの場面では、重要契約の価値に直結することがあります。

承諾取得の実務も確認する

譲渡禁止条項では、承諾が必要かどうかだけでなく、承諾取得の手続も重要です。

誰に、いつまでに、どのような資料を出して承諾を得るのか。相手方が合理的な理由なく承諾を拒めないのか。一定期間内に回答がない場合に承諾とみなすのか。これらが定められていないと、実務上の手続が重くなります。

特に、重要顧客との契約やライセンス契約では、承諾取得に時間がかかることがあります。将来の取引に備えるなら、承諾手続まで具体的に設計しておくことが大切です。

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