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Insight
法務における生成AI活用法

AI時代に、若手弁護士はどう育つのか

こんにちは!Legal Agent 代表弁護士の朝戸です。

Legal Agentは、生成AI時代の法律事務所として、新しい時代の法務サービスを提供しています。

案件内容にもよりますが、Legal Agentでは、生成AIをフル活用することによって、多くのご依頼について1営業日以内、場合によっては即日での納品を行っています。

最近、法律事務所における生成AI活用について考える中で、かなり重要だと感じているテーマがあります。

それは、AI時代に若手弁護士がどう育つのか、という問題です。

生成AIは、多くのアソシエイト弁護士の仕事を奪う

まず、かなり率直に言うと、生成AIは多くのアソシエイト弁護士の仕事を奪うと考えています。

ここでいう「仕事を奪う」というのは、弁護士という資格そのものが不要になるという意味ではありません。企業法務の現場で、これまで若手弁護士が長い時間を使って担ってきた作業の相当部分が、生成AIによって置き換えられていくという意味です。

特に影響が大きいのは、一年目から三年目くらいのアソシエイト弁護士が担ってきた仕事だと思います。

法律事務所に入ったばかりの若手弁護士は、いきなり案件全体の方針を決めるわけではありません。まずは、資料を読む、契約書を確認する、リサーチをする、過去案件を探す、メモを作る、初稿を作る、上位者のレビューを受ける、というところから始まります。

この仕事は、法律事務所にとっては重要な生産活動であり、若手弁護士にとっては貴重な教育を受ける機会でもありました。

しかし、生成AIは、まさにこの領域に強いです。

AIは疲れずに大量の資料を読み、契約書の条項を比較し、過去のひな形や類似案件を探し、論点候補やたたき台の文案を作り、文章の形式まで整えます。

そうなると、従来であれば若手弁護士に任せていた初動作業を、まずAIに投げるという流れが増えるはずです。

これは、クライアントから見れば自然な変化です。

同じ品質、あるいは一定以上の品質のたたき台が短時間で出てくるのであれば、クライアントは、若手弁護士が長時間かけて初動作業をすることに対して、従来ほどの価値を感じにくくなります。

法律事務所側から見ても、AIでできる作業をあえて長時間かけて人間にやらせることは、請求の納得感や業務効率の面で難しくなっていくと考えています。

この変化は、従来の法律事務所のピラミッド型のモデルにも影響します。

従来は、パートナーやシニア弁護士が案件全体を見て、アソシエイト弁護士が大量の作業を支えるという構造がありました。アソシエイト弁護士の時間が、案件処理の量を支えていた面があります。

しかし、AIがその作業量の相当部分を担うようになると、単に若手弁護士を増やせば処理能力が増える、という発想は弱くなります。

むしろ、少数の弁護士がAIを使い、大量の初動作業を短時間で進め、最後に弁護士が判断するという形に最適化されることになります。

これまでのように、時間をかけて丁寧に作業すること自体が評価される場面は減っていきます。もちろん、丁寧さは引き続き重要です。しかし、AIが数分で作った初稿に対して、人間が何時間もかけて同じ粒度の作業をやり直すだけでは、クライアントに価値を説明しにくくなります。
法律事務所が若手を採用したいと思っても、クライアントからの経済合理性、外部の競争圧力により、それが許されなくなる、という構造です。

これは、若手弁護士にとって厳しい変化です。

なぜなら、これまで若手弁護士は、そのような地味な作業を通じて育ってきたからです。契約書を何度も読み、リサーチで迷い、過去案件を探し、上位者に赤入れされる中で、少しずつ法律実務の感覚を身につけてきました。
私自身もそうでしたし、それが当たり前であると考えて実務を行ってきました。

もしAIがその前工程を一気に担うようになると、若手弁護士が経験を積む機会そのものが減る可能性があります。

これは、法曹界、全体にとって、非常に大きな問題であると考えています。

法律事務所は、単に目の前の案件を処理するだけではなく、次の世代の弁護士を育てる必要があります。ところが、若手が担当していた作業がAIに置き換わると、これまで自然に発生していた教育機会が減ってしまいます。

その意味で、生成AIは、アソシエイト弁護士の仕事を奪うだけでなく、従来の若手育成の仕組みも揺さぶる存在だと思っています。

本当に若手はもう不要なのか?本当に育たなくなってしまうのか?

ただ、私は、この変化を悲観だけで見ているわけではありません。

AIが奪うのは、時間をかけて作業すること自体の価値です。

一方で、AIが大量に作ってくる成果物を読み、疑い、修正し、案件ごとの判断に落とし込む力の価値は上がります。そして、この力もまた、経験値によって伸びます。

つまり、AI時代の若手弁護士は、従来と同じ形で仕事をするだけでは厳しくなりますが、AIを前提に大量の案件と大量の成果物に触れることができれば、むしろ従来よりも速い速度で成長できる可能性があります。

私は、ここに若手弁護士の新しい育ち方があると考えています。

どれだけ多くの案件を対応してきたか

私は、弁護士の優秀さのかなり大きな部分は、経験値で決まると思っています。

もちろん、地頭、文章力、コミュニケーション能力、性格、胆力のような要素もあります。ただ、企業法務の実務では、どれだけ多くの契約書を読み、どれだけ多くの交渉を見て、どれだけ多くの失敗や赤入れを経験し、どれだけ多くのクライアントの意思決定に触れてきたかが、最終的な判断の質にかなり効いてくると考えています。

同じ業務委託契約でも、十件しか見たことがない弁護士と、百件、千件見てきた弁護士では、見えているものが違います。損害賠償責任の上限を入れるべきか、秘密保持違反を除外すべきか、知的財産権の帰属をどこまで交渉すべきかという判断は、条文の知識だけではなく、過去に似た案件で何が起きたかという経験値にかなり支えられています。

その意味で、生成AIは、若手弁護士の成長を妨げるものではなく、むしろ経験値を最速で積むための道具になる可能性があると考えています。

AIで、若手が触れられる案件数は増える

生成AIを使うと、契約書の要約、条項比較、リサーチ、修正文案の作成、コメント案の作成、デューデリジェンス資料の一覧化など、これまで若手弁護士やスタッフが多くの時間を使っていた作業を、かなり速く進めることができます。

これは、クライアントにとって大きい変化です。

契約レビューが早く返ってきたり、法務相談への初動が早くなったり、大量の資料を短時間で読み込めたり、過去案件やひな形をすぐに探せたりするようになります。法務部員が外部弁護士から返ってきたコメントを再度翻訳し直す負担も減らせると考えています。

同時に、若手弁護士にとっても大きな変化です。

これまでは、一人の若手弁護士が一年で触れられる案件数や契約書の数には限界がありました。資料を探し、全文を読み、初稿を作り、形式を整えるだけで時間がかかるからです。

しかし、生成AIが前工程を速くしてくれると、若手弁護士が触れられる案件数は増えます。契約書レビューの回転数も増えますし、リサーチの初動も速くなります。デューデリジェンスで確認できる資料の量も増えます。過去案件やひな形との比較も、以前よりかなり簡単になります。

そうなると、若手弁護士は、従来よりも短い期間で大量の実務に触れられる可能性があります。

私は、この変化をかなり前向きに捉えています。

経験値の回転数が上がる

従来の若手弁護士は、契約書を一通レビューするにも、かなり時間がかかっていました。

全文を読み、気になる条項に印をつけ、過去のひな形を探し、リサーチし、修正文案を作り、コメントを書く。これを一件ずつ積み上げることで、少しずつ経験値を得ていました。

このプロセス自体は重要です。

ただ、生成AIを使うと、過去案件を探す時間、条項を比較する時間、一次的な論点を洗い出す時間、コメント案を作る時間が短くなります。その結果として、若手弁護士は一件の案件に触れる速度を上げられます。

これは、単に楽になるという話ではありません。

むしろ、若手弁護士が触れる案件の量が増え、比較できる成果物の量が増え、フィードバックを受ける回数も増えるということです。

弁護士の経験値は、案件数だけで決まるわけではありません。ただ、一定以上の量をこなさないと見えてこないものはあります。同じNDAを何十件も見るから、目的外利用の書き方の違いが分かります。同じ業務委託契約を何十件も見るから、責任制限や知的財産権の条項でどこが交渉ポイントになるかが分かります。同じ投資契約を何度も見るから、創業者にとって本当に重い条項がどこかが見えてきます。

生成AIは、この経験値を積む速度を上げる可能性があります。

若手弁護士が、AIの出力、過去案件、ひな形、上位者の修正を短時間で見比べられるようになると、一つの案件から得られる学習量も増えます。単に一件を処理するのではなく、似た案件との違い、上位者が直した理由、クライアントごとの方針の違いまで同時に学べるからです。

AIの成果物を高速でレビューする力

ただし、生成AIを使えば自動的に若手弁護士が育つわけではありません。

AIが大量の成果物を作るようになると、それを高速でレビューし、判断し、修正し続ける必要があります。

この作業は、慣れていないとかなり大変です。

実際、私自身も、生成AIが大量に出してくる成果物を高速で確認していると、脳の処理が追いつかなくなるような感覚になることがあります。契約書、コメント、リサーチ、記事、メモ、Word修正案などが次々に出てくると、それぞれについて、どこが正しく、どこが浅く、どこを直すべきかを短時間で判断し続ける必要があるからです。

AIが作ってくる大量の成果物を、弁護士の判断で高速に通していく力が必要になり、今までとは違った能力が求められるようになると考えています。

若手弁護士が若い時期からこの働き方に慣れていくと、かなり強い弁護士になる可能性があると思っています。

大量の案件を高速でこなし、大量のAI成果物を高速でレビューし、その都度、上位者からフィードバックを受ける。こうした訓練を積めるなら、若手弁護士は従来よりも早く経験値を積み、より早い段階で優秀になっていく可能性があります。

AIの出力を疑う力も、経験値で磨かれる

AIはかなり賢くなっています。契約書レビューでも、法律相談でも、デューデリジェンスでも、かなりそれらしいアウトプットを出します。文体も整っていますし、論点も一見すると網羅されているように見えます。

ただ、法律実務では、「それらしい」だけでは足りません。

根拠となる条文やガイドラインが正しいのか、契約書の前提事実を取り違えていないか、クライアントの立場を間違えていないかを確認する必要があります。相手方に見せてよいコメントなのか、社内向けにだけ残すべきリスクなのか、今回の案件では交渉すべき論点なのか、あえて触れない方がよい論点なのかも見極める必要があります。

こうした検証力も、結局は経験値によって磨かれます。

契約書の構造を分かっていること、過去案件との差分が見えること、クライアントの事業を理解していること、相手方との関係や取引金額を踏まえて落としどころを考えられることが必要です。

だからこそ、若手弁護士には、AIを遠ざけるのではなく、AIの出力を大量に見て、大量に直し、大量にフィードバックを受ける機会を作ることが重要だと考えています。

教育を偶然に任せられなくなる

従来の法律事務所では、教育はある程度、案件の流れの中で自然に行われていました。

忙しい案件に入り、大量の資料を読み、上位者から赤入れを受け、クライアントとのやり取りや相手方との交渉を見る。そうした経験の中で、若手弁護士は少しずつ育っていきます。

AI時代には、この属人的な教育をそのまま残すだけでは足りないと考えています。

AIによって作業時間が短くなるほど、偶然の経験が減る可能性もある一方で、意識的に設計すれば、若手弁護士が触れられる経験の量はかなり増やせるからです。

具体的には、AIが作った成果物に対して、若手弁護士がどの観点でレビューするのか、どの差分を学習するのか、どのナレッジを蓄積するのかを決める必要があります。

案件フォルダ、過去のやり取り、ひな形、チェックリスト、上位者の修正理由が残っていれば、若手弁護士は単にAIの出力を見るだけではなく、過去に弁護士がどう判断したかを学べます。

AI時代の教育では、経験を再現可能な形で残すことがかなり重要になります。

新時代弁護士の誕生が来るはず

AI時代に若手弁護士は不要になるのか、という問いには、私はそうではないと考えています。

むしろ、若手弁護士が育つ速度は上がる可能性があります。

弁護士の優秀さの大きな部分が経験値にあるとすれば、生成AIは、その経験値を最速で積むための環境を作れる可能性があります。若手弁護士が、若い時期から大量の案件に触れ、大量のAI成果物をレビューし、上位者の判断との差分を学び続けることができれば、従来よりも早く、より実務に強い弁護士になっていけるかもしれません。

もちろん、そのためには、AIを使うだけでは足りません。教育、ナレッジ管理、レビュー体制、フィードバックの仕組みを作る必要があります。

私は、AI時代の若手弁護士が、これまで以上に優秀になり、「新時代弁護士」として活躍していくようになると考えておりますし、LegalAgentとしても、その一助になるような組織を作っていきたいと考えています。

最後に

LegalAgentでは、生成AIと企業法務に精通した弁護士の協働により、契約レビュー、資金調達、法務アウトソーシング、M&A対応などを行っています。

法務関係でお困りの方がいらっしゃいましたら、お力になれる場面が多いと考えておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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