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取引先が倒産した|破産手続開始通知が届いた日にすべきこと

こんにちは!Legal Agent代表弁護士の朝戸です。

取引先の代理人弁護士又は裁判所から破産手続開始の通知が届いたとき、経理・管理部門の担当者がまず知りたいのは、何日以内に何をすればよいかという一点だと思います。売掛金がある場合はどう債権届出をすればよいか、買掛金が残っている場合は相殺できるのか、倉庫に置いたままの自社商品は引き揚げてよいのか。通知を受け取った直後に期限と資料を確認することで、期限徒過や証拠の散逸を防ぎ、相殺や取戻権を検討できる余地を確保しやすくなります。

届いた直後に確認する事項

管財事件の通知書には、事件番号、破産管財人の氏名・連絡先、債権届出期間が記載されていることがあります。ただし、同時廃止事件や、破産財団で手続費用を支弁するのに不足するおそれがある事件では、債権届出期間が定められない場合があります。届出期間の日数は法律に一律の定めがなく、破産法上、裁判所が個々の事件ごとに定めることとされています(破産法111条、31条)。事件ごとに債務者の財産状況や関係者数が異なるため、期間も事件ごとに違ってきます。したがって「〇日以内」という数字を通知書の記載より前に見込みで判断することはできません。通知書に記載された期日を確認するのが最初の作業になります。

このタイミングでは、期日の確認に加えて債権債務の洗い出しも進めます。自社が取引先に対して有する債権(売掛金、貸付金、預け在庫の対価など)を洗い出し、金額と発生原因を裏付ける契約書、請求書、納品書、検収記録を手元にそろえます。同時に、自社が取引先に対して負っている債務(買掛金、預り金、前受金など)がないかも確認します。売掛金と買掛金が両方ある取引先の場合、この段階での整理が後の相殺の可否に直結するため、片方だけを見て終わらせないことが必要です。

破産管財人が選任されている場合、今後の連絡窓口は取引先の担当者ではなく破産管財人になります。通知書に記載された管財人の連絡先を確認し、以後の請求や照会はそちらに向けます。管財人を介さず、取引先の元担当者との間で個別の弁済、担保設定又は商品の引渡しを合意し、実際に受領することは、後述する否認や取戻権の争いにつながる可能性があるため控えます。

債権届出まで

債権届出は、破産債権者が配当を受けるために必要な手続です。届出では、債権の額と発生原因、優先的破産債権に当たるかどうか、担保(別除権)の目的物や別除権によって回収できないと見込まれる額などを裁判所に届け出ます(破産法111条)。担保を持たない一般債権者(売掛金など)は、契約書、請求書、納品書、検収書といった発生原因を裏付ける資料の写しを添付して届出書を提出することになります。

届出期間は事件ごとに裁判所が定めるものであり、通知書に記載された期日までに届出をしないと、配当を受けられないことがあります。破産法112条には、責めに帰することができない事由により一般調査期間の経過又は一般調査期日の終了までに届出ができなかった場合などの例外が定められていますが、まず期間内の届出を前提に準備を進める必要があります。担当者としては、通知書を受け取った時点で社内の債権額を確定させる作業を止めない、というのが実務上の要点になります。金額に争いがある場合や資料が不足している場合でも、裁判所又は破産管財人の案内に従い、まず期間内の届出可否を確認して進める方が、無届出のまま期限を過ぎるより安全です。

取引先の倒産手続が破産ではなく民事再生である場合は、債権届出の制度や配当の考え方が異なります。通知書に記載された手続の種類(破産か民事再生か)をまず確認しておくと、以降の対応の見立てを誤りません。

やってはいけないこと

通知を受けてから届出までの間、担当者が焦って行いがちな対応の中には、後で問題になるものがあります。

管財人を介さず、取引先の元担当者との間で一部の売掛金だけを先に支払ってもらったり、新たな担保を設定してもらったりすることは避ける必要があります。破産者が支払不能になった後や破産手続開始の申立てがあった後に、特定の債権者だけに弁済や担保提供を行った場合、その債権者が支払不能や申立ての事実を知っていたときは、破産管財人が後からその行為を否認できることがあります(破産法162条)。否認が認められると、受け取った金銭を返還し、又は設定された担保の効力を失う可能性があるため、通知を受けた後に個別交渉で先に回収しようとする場合は、管財人への確認と法的な検討が必要です。

買掛金がある場合に、相殺できると決めてかかって一方的に処理を進めることも避けるべき対応です。破産手続開始時に破産者に対して債務を負う破産債権者には、破産手続によらず相殺できる場合があります(破産法67条)。一方、破産手続開始後に債務を負担した場合や、支払不能後に相殺目的で債務を作り出した場合、支払不能後に事情を知りながら破産債権を取得した場合など、一定の場合には相殺が禁止されます(破産法71条、72条)。自社の帳簿上「売掛金と買掛金があるから差し引きすればよい」と考えて処理する前に、双方の債権債務がいつ、どのような原因で発生又は取得されたかを確認しなければなりません。相殺が禁止される場合に該当するかどうかは、通知書の記載だけでは分からないことが多く、資料をそろえたうえで確認すべき論点です。

取引先に預けている自社所有の動産を、断りなく引き揚げに行くことも控えるべきです。破産手続開始前から自社が所有権を持ち続けている財産については、破産財団に属さない財産として取り戻す権利(取戻権)が認められています(破産法62条)。所有権留保付きで販売した商品についても、所有権留保の合意内容、対象物の特定状況、対抗要件その他の事情により、取戻権を主張できる可能性があります。ただし、対象物が自社の所有物であることを示す資料がなければ、取引先の倉庫や工場に無断で立ち入って持ち帰るという対応はできません。管財人に連絡し、対象物の特定と引渡しの方法について確認したうえで進める必要があります。担保権(特別の先取特権、質権、抵当権)を持っている場合は、取戻権とは別に別除権の問題となり(破産法65条)、権利の性質によって行使方法が異なります。

売掛金と買掛金がある場合の整理

取引先との間に売掛金と買掛金の両方が存在する会社では、相殺による回収を検討したくなります。この場合、まず確認すべきは相殺の対象となる自社の債権(取引先に対する売掛金)と自社の債務(取引先に対する買掛金)が、いつ、どのような原因で発生したかです。相殺禁止に触れる時期に発生した債務であれば、たとえ帳簿上は差引計算が成り立っても、破産管財人から相殺の効力を争われる可能性があります。

実務上は、相殺の意思表示を行う前に、双方の債権債務の発生時期と金額を一覧にし、相殺禁止事由に該当する事情がないかを確認したうえで進めることになります。相殺できると判断した場合でも、破産管財人に対して相殺の意思表示を行った記録を残しておくことが、後日の争いを避けるうえで役立ちます。相殺の可否について自社だけで判断がつかない場合は、この段階で弁護士に相談した方がよいと考えられます。

通知を受けてから配当までの見通し

債権届出を終えた後は、破産管財人による債権調査、財産の換価、配当という流れに進みます。配当がいつ、どの程度の割合で行われるかは事件ごとに異なり、無担保の一般債権者への配当が僅少にとどまることや、配当自体が行われないまま手続が終わることもあります。届出は全額回収を約束するものではなく、配当を受けるための前提条件を満たす作業だと理解しておくのが実務的です。

取引先の倒産という通知を受けた直後は、焦って個別回収や無断の引揚げに動くのではなく、通知書の期日を確認し、債権の発生原因を裏付ける資料をそろえ、相殺や取戻権の対象になり得る権利関係を管財人と整理することが重要です。早い段階で社内資料と窓口を一本化しておけば、届出期限を守り、認められる範囲での回収可能性を検討しやすくなります。

取引先倒産への初動対応をご検討の企業様へ

債権届出書類の準備や相殺・取戻権の可否判断は、通知を受けてからの限られた時間の中で、資料の洗い出しと法的な整理を同時に進める必要がある作業です。LegalAgentでは、事業再生・倒産・債権回収の対応に加え、日常的な契約書管理や取引先の与信管理を含めた法務体制の整備を法務アウトソーシングでご相談いただけます。

取引先との継続的な契約関係を見直す際は、譲渡制限や地位の移転に関する条項の確認も合わせて有用です。譲渡禁止条項や、継続取引の基本条件を定める取引基本契約書のレビュー観点もあわせてご覧ください。

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