誹謗中傷・権利侵害投稿への対応は、情プラ法時代の実務として見る
こんにちは!Legal Agent代表弁護士の朝戸です。
インターネット上の誹謗中傷、なりすまし、プライバシー侵害、営業妨害、著作権侵害、虚偽情報は、スタートアップにとっても無視できないリスクです。
代表者や従業員が攻撃される場合もあれば、サービス名や会社名で虚偽情報が拡散される場合もあります。顧客やユーザー同士の投稿が問題になるプラットフォーム事業者もあります。
2025年4月には、いわゆるプロバイダ責任制限法が改正され、情報流通プラットフォーム対処法として施行されています。
大規模プラットフォーム(総務大臣が指定する大規模特定電気通信役務提供者)には、権利侵害情報への対応の透明化・迅速化に関する義務が課されるなど、投稿削除や権利侵害対応の実務も変わってきています。
削除依頼と発信者情報開示を分ける
権利侵害投稿への対応では、削除依頼と発信者情報開示を分けて考える必要があります。
削除依頼は、問題となる投稿を消してもらうための対応です。
発信者情報開示は、投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事対応を検討するための対応です。現在は、発信者情報開示命令という裁判所の非訟手続を利用することもできます。
削除を優先すると、投稿が消えて被害拡大を抑えられる一方、証拠保全が不十分だと投稿者特定が難しくなることがあります。
そのため、初動では、投稿URL、スクリーンショット、日時、アカウント情報、検索結果、拡散状況を保存したうえで、削除依頼と開示請求の方針を決める必要があります。
権利侵害性を具体的に説明する
プラットフォームに削除申請をする場合、単に「不快」「事実と違う」と伝えるだけでは不十分なことがあります。
名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害、商標権侵害、なりすまし、営業妨害など、どの権利がどのように侵害されているのかを具体的に説明する必要があります。
たとえば、名誉毀損では、投稿がどの社会的評価を低下させるのか、事実摘示か意見論評か、真実性・公共性が問題になる可能性があります。
プライバシー侵害では、公開された情報の性質、本人識別性、私生活上の事実、公開による不利益を説明します。
削除依頼文は、感情的な抗議文ではなく、プラットフォームが判断しやすい法的説明にする必要があります。
自社がプラットフォーム運営者の場合
自社が投稿プラットフォーム、レビューサイト、コミュニティ、マーケットプレイス、SNS、掲示板、マッチングサービスを運営している場合、利用者から削除申請を受ける側にもなります。
この場合、利用規約、削除基準、通報フォーム、本人確認、投稿者への照会、削除判断、異議申立て、記録保存を整える必要があります。
権利侵害投稿を放置すれば被害者から責任を問われる可能性があります。一方で、安易に削除すると投稿者との関係や表現の自由の問題が生じます。
プラットフォーム運営では、削除判断の基準とプロセスを事前に作っておくことが重要です。
企業防衛と表現の自由のバランス
企業に対する批判的投稿のすべてが違法になるわけではありません。
商品やサービスに対する批判、労働環境に関する意見、消費者の不満、内部告発的な投稿には、一定の表現の自由や公共性が関係する場合があります。
企業としては、不都合な投稿をすべて削除しようとするのではなく、明らかな権利侵害、誤情報、なりすまし、個人情報漏えい、脅迫、差別的表現などを区別して対応する必要があります。
削除請求は、法的な権利行使であると同時に、広報上の判断でもあります。
まとめ
誹謗中傷・権利侵害投稿への対応では、証拠保全、削除依頼、発信者情報開示、広報対応を分けて考える必要があります。
また、自社がプラットフォーム運営者である場合には、通報受付、削除基準、判断プロセス、記録保存をあらかじめ整えておくことが望ましいと考えられます。
LegalAgentでは、誹謗中傷、なりすまし、プライバシー侵害、著作権侵害、削除依頼、発信者情報開示、プラットフォーム規約整備を支援しています。情プラ法時代の投稿対応は、被害者側・運営者側の両方から実務を理解することが重要だと考えています。