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団体交渉の申入れへの会社側の対応|合同労組・誠実交渉義務・労働協約

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

社内に労働組合がない会社でも、団体交渉の申入れを受けることがあります。従業員が社外の合同労組(ユニオン)に個人で加入すれば、その組合が雇用主である会社に交渉を申し入れることができるからです。労働組合は労働者が2人以上集まれば結成でき、役所への届出や会社の承認も要りません(東京都労働委員会の用語集)。

たとえば、3か月前に解雇した元従業員が加入した合同労組から、解雇の撤回と未払残業代の支払を求める申入書が届き、回答期限が1週間後とされていた場合を考えます。会社がこの1週間で決めるのは、交渉に応じるかどうかではありません。労働組合法7条2号は正当な理由のない団体交渉の拒否を禁じており、解雇の効力を争う元従業員が加入した組合からの申入れにも同号が及ぶためです。決めるべきなのは、交渉の席に着く担当者と日時・場所、そして要求事項の一つひとつに何を説明するかです。

会社側の対応で中心になる論点は、7条2号が定める団体交渉に応じる義務と、最高裁が同号から導いた誠実交渉義務の中身です。交渉と並行して会社がとる行動については、同条1号の不利益取扱いや3号の支配介入に当たらないかが問われます。合意に至れば労働組合法14条の労働協約が、交渉が行き詰まれば労働委員会の手続が、それぞれ次の論点になります。

団体交渉に応じる義務と誠実交渉義務(労働組合法7条2号)

憲法28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定めています。労働組合法7条2号は、使用者が「雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」を不当労働行為として禁じています。同法6条により、労働組合の代表者のほか、労働組合の委任を受けた者も、組合や組合員のために交渉する権限を持ちます。

「雇用する労働者の代表者」には、社外の合同労組も含まれます。労働組合法は、組合員の全員や過半数が特定の会社の従業員であることを求めていません。自社の従業員が1人加入しただけの合同労組からの申入れも、7条2号の対象になります。社内に過半数の組合があり、同じ事項で既に妥結していても、合同労組との交渉に応じなければなりません(福島県労働委員会のQ&A)。解雇された元従業員が加入した組合が、解雇の撤回などを求めて交渉を申し入れることもあります。解雇から社会通念上合理的といえる期間内の申入れであれば、会社は交渉に応じる義務を負います(同Q&A)。

会社が応じなければならない交渉事項(義務的団交事項)は、組合員の労働条件その他の待遇や、会社と組合の関係の運営に関する事項のうち、会社が決められるものです。賃金や労働時間のほか、解雇・懲戒・配置転換といった人事や、団体交渉のルールも含まれます。工場の閉鎖のような経営判断であっても、それに伴う雇用や労働条件は交渉の対象になります(同Q&A)。

交渉を拒む「正当な理由」は厳格に判断されます。三重県労働委員会は、会社が多忙であることや組合の要求が過大であることは正当な理由に当たらないと説明しています。滋賀県労働委員会が紹介する例でも、上部団体の役員が参加することや、交渉事項が裁判で係争中であることを理由に交渉を拒んだ対応が、不当労働行為と判断されています。

交渉の席に着いただけでは、7条2号の義務を果たしたことになりません。最高裁は、国立大学法人山形大学と教職員等で組織された労働組合との団体交渉が争われた事件で、誠実交渉義務の内容を示しました。使用者は「必要に応じてその主張の論拠を説明し、その裏付けとなる資料を提示するなどして、誠実に団体交渉に応ずべき義務」を負い、この義務に違反することは7条2号の不当労働行為に当たるとしています(最二小判令和4年3月18日民集76巻3号283頁)。同じ判決は、交渉事項について合意が成立する見込みがない場合でも、労働委員会は誠実に交渉するよう命じる救済命令を出せるとしました。会社が応じられないと決めている要求についても、その理由と裏付けを説明する交渉は求められます。

滋賀県労働委員会は、不誠実な交渉とされた例を紹介しています。組合の要求に「解決済み」と答えるだけで、理由や根拠を説明しなかった対応がその一つです。賃上げが議題なのに賃金の決定権を持たない役員だけが出席した対応や、多忙を理由に開催日を引き延ばし続けた対応も挙げられています。他方で、会社に組合の要求を受け入れる義務まではありません(東京都労働委員会の用語集)。双方が主張と説明を出し尽くし、交渉を重ねても進展が見込めない段階に至れば、会社が交渉を打ち切っても誠実交渉義務に反しないとされています。その後の事情の変化で交渉を再開する意味が生じたときは、会社は再開に応じる義務を負います(福島県労働委員会のQ&A)。

交渉と並行して問われる不利益取扱いと支配介入(7条1号・3号)

申入れの後に会社が組合員に対してとる人事上の措置は、7条1号に違反しないかが問われます。同号は、労働者が組合員であることや組合に加入したこと、組合の正当な行為をしたことの「故をもつて」、解雇その他の不利益な取扱いをすることを禁じています。解雇や降格、昇給の差別のほか、組合員だけを社内の行事に参加させないといった扱いも、不利益な取扱いとされた例があります(滋賀県労働委員会)。表向きは別の理由を挙げていても、会社の言動から組合への敵視が明らかであれば、不利益取扱いと判断されることがあります。

同条3号は、労働者が労働組合を結成し、又は運営することを「支配し、若しくはこれに介入すること」を禁じています。支配介入は、組合の運営に実際に影響が出たかを問わず、客観的に介入の意味を持つ行為があれば成立します(福島県労働委員会のQ&A)。組合からの脱退の働きかけや組合加入状況の調査、組合執行部を非難する文書の全従業員への配布は、支配介入に当たる例として挙げられています(広島県労働委員会の解説)。社長が交渉の席で、要求を受け入れる代わりに上部団体へ加盟しないよう求めた発言も、支配介入に当たると考えられています(福島県労働委員会のQ&A)。

支配介入の主体は社長に限りません。実質的な人事権を持つ部長や課長の言動も、会社の支配介入と判断されることがあります。係長のようにさらに下の立場の者の行為でも、会社が知りながら止めなかった場合には、会社の意思に沿った行為とされることがあります(滋賀県労働委員会)。

申入書の受領から初回交渉までの対応

申入書を受け取ったら、社内の対応窓口を人事・法務の担当者に一本化してください。組合員の上司となる管理職には、組合への加入を話題にした面談や加入状況の聞き取りをしないよう伝えてください。組合員の配置や評価を変えるときに事前に窓口へ相談することも、管理職に指示しておく必要があります。申入れの直後に組合員へ不利益な措置をとると、組合員であることを理由とする措置ではないかが争われるためです。

申入書で確かめる事項

窓口の担当者は、回答期限までに次の4点を確かめてください。

  • 組合の名称・所在地・代表者と、社内の組合か合同労組かの区別
  • 組合員として名前が挙がっている従業員と、その雇用の状況
  • 要求事項ごとの内容と、会社が決められる事項かどうか
  • 回答期限と、交渉の希望日時・場所

組合の規約や結成の経緯は、会社が審査するものではありません。組合が労働委員会の救済を受けるには、2条と5条2項の要件に適合することを労働委員会で立証しなければならず(5条1項)、その判断は労働委員会が行います。管理職が組合員に含まれている場合も、2条1号の「使用者の利益を代表する者」に当たるかは、役職名でなく実際の権限と職務で判断されます(東京都労働委員会の用語集)。管理職の加入を理由に交渉を断ることは避けてください。退職代行の窓口となった労働組合から退職条件の交渉を申し入れられた場合の初動は、退職代行から連絡が来た会社が確認すべき初動対応で扱いました。

組合員の範囲は、7条2号の「雇用する労働者」がいるかを確かめるための事項です。自社の従業員が加入していることが明らかであれば、組合員名簿が提出されないことは交渉を拒む理由になりません(福島県労働委員会のQ&A、三重県労働委員会)。他の従業員に組合へ加入しているかを尋ねて回ると、支配介入に当たると解されている組合加入状況の調査になります。

要求事項は一つずつ義務的団交事項に当たるかを見たうえで、事実関係を裏付ける資料を社内で集めてください。解雇の撤回であれば解雇理由を裏付ける記録、未払残業代であれば勤怠記録と賃金台帳が中心になります。未払残業代のように労働基準法違反の有無が問われる事項は、労働者が違反の事実を行政官庁や労働基準監督官に申告することもできます(労働基準法104条1項)。その場合の調査は、団体交渉とは別の手続として進みます。調査への対応は労働基準監督署の調査対応|臨検・是正勧告・報告書の実務で扱いました。

回答期限は組合が設定したもので、その日を過ぎたこと自体から法的な効果が生じることはありません。それでも、回答をしないまま期限を過ぎれば、交渉を拒否したものとして救済を申し立てられる原因になります。準備に時間がかかる場合でも、交渉に応じることと日程の候補、要求事項への回答を示せる時期を、期限までに書面で伝えてください。

日時・場所・出席者・時間の協議

団体交渉の日時や場所、出席者の人数、1回あたりの時間に法律の定めはなく、会社と組合が協議して決めます。三重県労働委員会によれば、開催場所は当事者間で話し合って決める必要があります。会社が話し合いに応じない場合や、必要性や合理性のない条件に固執して交渉に至らない場合には、正当な理由のない団体交渉拒否となるおそれがあります。会社は日時と場所の候補を具体的に示し、組合の希望と折り合わない点は、初回の交渉の中で協議を続けてください。交渉のルールそのものも義務的団交事項に含まれるため、ルールについての組合の提案にも理由を付けて回答してください。

会社側の出席者に代表者を加える法律上の義務はありません。役員や人事部長に交渉の権限を与えて担当者とすることができ、妥結の権限まで与える必要もありません(福島県労働委員会のQ&A)。ただし、用意した回答を読み上げ、質問には「持ち帰って検討します」と繰り返すだけの対応は、不誠実な交渉として不当労働行為に当たる可能性があります(同Q&A)。要求事項ごとに担当者がその場で答えられる範囲と、持ち帰った事項を次回までに回答する手順を、事前に社内で決めてください。組合側から上部団体の役員が出席しても、それを理由に交渉を拒むことはできず、会社側も出席者に弁護士を加えることができます。

開始時刻と終了予定時刻、就業時間中に行うかどうかと出席した組合員の賃金の扱いも、事前に組合と合意しておいてください。就業時間中に交渉を行い、出席した組合員の賃金を差し引かない取扱いは、7条3号ただし書により、禁止される経費援助に当たりません。録音については、双方が録音するかを冒頭で確認してください。団体交渉の録音は、労働委員会の審査で反訳を付けて書証として提出されることがあります(東京都労働委員会の用語集)。

回答書と議事録の作り方

回答書は、申入書の要求事項の番号ごとに、応じる事項と応じられない事項、検討中の事項に分けて書いてください。応じられない事項には理由を書き、裏付けとなる資料を回答書に添付するか交渉の席で示してください。会社が決められない事項にはその理由を、検討中の事項には回答できる時期を書いておけば、次の交渉で会社が何を説明するかが組合にも伝わります。労働委員会で誠実交渉義務が争われたとき、会社が論拠を説明し資料を示したことを証明するのは、回答書と交渉の記録です。組合や上部団体を批判する記載や、組合を通さずに本人と直接話し合いたいという提案は、支配介入と評価されるおそれがあるため、回答書に書かないでください。

交渉の回ごとに、会社側でも議事録を作成してください。記録する事項は、日時・場所・出席者と要求事項ごとの双方の発言、会社が示した資料、持ち帰った事項と次回の予定です。団体交渉と並行して、組合員本人が解雇や未払賃金について労働審判を申し立てることもあります。交渉での説明と労働審判での主張が食い違えば、会社の主張の信用性を損ないます。議事録は、交渉に出席した担当者と人事・法務の担当者が内容を照らし合わせてから保存してください。労働審判への対応は労働審判を申し立てられた会社の対応|答弁書と第1回期日の準備で扱っています。

組合が作成した議事録や確認書への署名を求められたときは、その場で署名せず、記載内容を社内で確かめてください。合意した事項が書かれた書面に双方が署名すれば、表題が議事録であっても、労働協約として効力を持つことがあります。

合意内容の書面化と労働協約(労働組合法14条)

労働組合法14条は、「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる」と定めています。表題は問われません。協定書・覚書・確認書といった名前の書面でも、組合と会社が合意内容を書面にして双方が署名又は記名押印すれば、労働協約に当たります(福島県労働委員会のQ&A)。

労働協約に定める労働条件その他の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効となり、無効となった部分は協約の基準によって定まります(16条)。就業規則も、その事業場に適用される労働協約に反してはなりません(労働基準法92条1項)。有効期間は3年を超えて定めることができず、期間の定めのない協約は、署名又は記名押印した文書で90日前までに予告すれば解約できます(15条)。社内の組合と協約を結ぶ場合は、17条の一般的拘束力にも留意してください。一つの工場事業場で常時使用される同種の労働者の4分の3以上が一つの協約の適用を受けるに至ると、他の同種の労働者にもその協約が適用されます。

協約に署名する前に、合意内容が就業規則や他の従業員の労働条件とどう関係するかを確かめ、社内の決裁を経てください。協定書には、対象となる組合員と合意した事項、効力の発生日を書き、継続的な労働条件を定める場合は有効期間も書いてください。解決金を支払って雇用契約の終了を確認する合意は、組合員本人の権利に直接関わります。このような合意では、組合と会社に加えて本人にも当事者として署名を求めるのが適切と考えています。あわせて、協定書に定めるもののほかに本人と会社の間に債権債務がないことを確認する条項を入れてください。

労働委員会の救済申立てとあっせん

労働委員会は、公益委員・労働者委員・使用者委員の三者で構成され、不当労働行為の審査と労働争議の調整を行う機関です。労働基準法などに基づく監督指導は労働基準監督署が行い、労働委員会は担当しません(中央労働委員会のよくあるご質問)。

組合は、会社の対応が7条の不当労働行為に当たると考えれば、労働委員会に救済を申し立てることができます。申立ては、行為の日(継続する行為はその終了した日)から1年以内に限られます(27条2項)。手続は救済申立て・調査・審問・合議・命令の順に進みます。中央労働委員会は、申し立てられた事件の半分以上が和解などで解決していると案内しています。会社は、申立書の写しが送付された日から原則として30日以内に答弁書を提出します(労働委員会規則41条の2第2項)。団体交渉の拒否が申し立てられた事件では、会長が調査の開始後速やかに期日を指定し、会社に口頭での答弁を求めることもできます(同条5項)。

救済命令は交付の日から効力を生じます(27条の12第4項)。都道府県労働委員会の命令に不服がある会社は、交付から15日以内に中央労働委員会へ再審査を申し立てることができます(27条の15)。再審査を申し立てない場合は、交付から30日以内に裁判所へ取消訴訟を起こせます(27条の19)。どちらの手続をとっても、命令の効力は止まりません(中央労働委員会のよくあるご質問)。確定した救済命令に違反すると、50万円以下の過料の対象になります(32条)。作為を命じる命令では、不履行の日数が5日を超えると、超えた日数1日につき10万円の割合で過料の上限が加算されます。確定判決で支持された救済命令に違反すれば、違反した者は1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科の対象となります(28条)。

救済申立てをしたことや、労働委員会の手続で証拠を提出し発言したことを理由に労働者を不利益に扱うことは、7条4号で禁じられています。労働委員会で審査が続いていることも、新たな交渉の申入れを拒む正当な理由に当たらないとされています(福島県労働委員会のQ&A)。答弁書とあわせて回答書や議事録、交渉で示した資料を証拠として提出し、交渉はその後も続けてください。

交渉が平行線をたどる場合や、日時・場所などのルールで折り合わない場合は、会社からあっせんを申請することもできます。労働関係調整法12条1項は、労働委員会の会長が、関係当事者の双方若しくは一方の申請又は職権に基づいてあっせん員を指名すると定めています。指名されたあっせん員は、双方の主張の要点を確かめ、事件が解決されるように努めます(13条)。一方からの申請の場合、相手方があっせんに応じるかは任意で、あっせん案を受け入れるかどうかも当事者が決めます(福島県労働委員会のQ&A)。三重県労働委員会は、あっせんを無料・非公開で行うと案内しており、中央労働委員会は、あっせんによる解決までの日数を平均60日前後としています。

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