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資金調達・投資契約スタートアップ法務

株式報酬の選択肢|RS・RSUとストックオプションの違い

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

上場を目指す会社が役員や中核メンバーに株式報酬を用意する場合、株式を渡す時期と本人の資金負担によって、適した制度は変わります。ストックオプション(新株予約権)に加え、RS(譲渡制限付株式)やRSU(譲渡制限付株式ユニット)も検討対象です。同じ株式報酬でも、株主になる時期、会社法上の決議、課税と換金の時期には違いがあります。制度名から選ぶ前に、誰にどの段階で株式を持ってもらうかを決める必要があります。

株式報酬における3つの基本類型

会社の株式価値を報酬として届ける仕組みは、ストックオプション、RS、RSUの3つの型に大きく分けられます。

新株予約権(ストックオプション)は、あらかじめ決めた行使価額で株式を取得できる権利を割り当て、対象者がその権利を行使して初めて株主になる設計です。これに対してRS(Restricted Stock、譲渡制限付株式)は、最初に株式そのものを交付し、一定期間の譲渡制限や退任時の無償取得といった没収条件を契約で付します。RSU(Restricted Stock Unit、譲渡制限付株式ユニット)は、勤続期間や業績目標を達成した段階で株式を交付するという約束を先に付与し、条件を満たした時点で初めて現物の株式が渡される仕組みです。

いずれも将来の企業価値に連動する点では一致していますが、対象者が何を受け取り、いつ株主になるのかという時間軸が根本から異なります。ストックオプションは権利を、RSは株式そのものを、RSUは株式を受け取る約束を渡す形になり、この違いが税務や会社法の手続き、運用のしやすさに直結します。

RSとRSUにおける権利確定の構造

RSとRSUは、いずれも在籍期間や業績に関する条件を設けることがありますが、株式が実際に手元に届く時期に違いがあります。RSUの法的な内容は契約によって定まります。ここでは、条件達成後に株式を交付する設計を対象とします。

RSは株式の交付時から対象者が株主になります。普通株式を交付する場合、契約上の譲渡制限があっても、議決権や配当を受ける権利は通常維持されます。実際の権利は株式の種類や基準日などにもよります。一方で、定められた期間中は第三者への売却を契約で制限し、途中退任などの事由が生じた場合には、会社が株式を無償取得する条件を設けます。有償で買い取る設計を採る場合は、自己株式取得の手続や財源規制も別途確認が必要です。

これに対してRSUは、付与の段階では株式が交付されません。対象者が手にするのは条件達成時に株式を受け取れるという将来の請求権であり、付与された段階では株主の立場には立ちません。定められた期間の勤務や業績基準の達成(ベスティング)を経て、初めて株式が発行または交付されます。

対象者から見れば、RSは当初から株主になる反面、条件を満たせなくなれば取得済みの株式を手放すことがあります。RSUは株式交付前には株主としての権利を持たず、条件未達の場合には約束した権利が失効する設計です。会社側では、RSは当初の交付時に株式の発行又は自己株式の処分を行います。RSUでは株式の交付手続を後日行いますが、報酬としての付与を決める段階で必要な決議まで先送りできるとは限りません。

ストックオプションとの比較における4つの視点

ストックオプションとRS・RSUを比較して検討する際は、実務上4つの相違点を押さえておく必要があります。

1つ目は、行使価額の払込みの有無です。金銭を出資する通常のストックオプションでは、対象者は権利行使時に行使価額を払い込みます。税制適格であっても、この払込みは必要です。RSやRSUには新株予約権の行使手続はなく、本人が現金を持ち出さずに株式を受け取る設計があります。ただし、会社法上の出資も不要となる方式と、会社が付与した金銭報酬債権を現物出資する方式は区別しなければなりません。

2つ目は、株価が下がった局面での報酬価値です。株価が行使価額を下回ると、その時点でストックオプションを行使しても差益は得られません。ただし、将来の値上がりの可能性があるため、権利自体の経済的価値が直ちにゼロになるとは限りません。RSやRSUは株式価値全体に連動するため、株価が下がっても価値が残る場合があります。それでも、株式価値の消失や没収・失効のリスクは残ります。

3つ目は、希薄化の時期と計算方法です。新株を発行する場合、ストックオプションは行使時、RSは当初の株式交付時、RSUは後日の株式交付時に発行済株式数が増えます。RSUの交付がストックオプションの行使より先になるかは、各制度の条件によります。自己株式を交付する場合は発行済株式数自体は増えませんが、議決権比率などに影響します。資本政策では、現在の株式数と将来交付予定の株式を含む計算を分けて示す必要があります。

4つ目は、株式を直接持っているという実感の違いです。ストックオプションの保有者が持つのは将来行使できる権利です。RSは当初から株式そのものを手にするため、対象者が株主としての当事者意識を持ちやすくなります。役員陣に株価や配当への影響を意識した意思決定を促したい場合には、この保有実感も制度を選ぶ理由になると考えています。

上場企業と未上場企業における活用の違い

上場会社では、後述する会社法202条の2の要件を満たす場合、取締役の報酬として金銭の払込み等を要しない株式交付が可能です。特則には対象者などの条件があります。取締役か従業員か、どの機関が報酬を決める会社かによって手続が異なります。

その一方で、未上場のスタートアップにおいては、RSやRSUはストックオプションほど手軽に使える制度にはなっていません。これには主に3つのハードルが存在するためです。

第1に、株式価値の算定作業です。RSは付与時に株式そのものを渡すため、その時点での適正な評価額を個別に確定させなければなりません。上場企業であれば市場の取引価格という客観的な基準がありますが、未上場企業では付与のたびに株価算定の手間と費用がかかります。

第2に、課税と換金の時期のずれです。RSは株式を先に交付しますが、課税時期は税務上の特定譲渡制限付株式等に該当するかによって変わります。RSUについても、名称だけで課税時期を判断せず、権利確定と株式交付の条件を確認します。導入前に、会社側の損金算入や源泉徴収も含めて税理士と検討する必要があります。

第3に、現金化する手段の制約です。未公開の株式は上場株式のように市場で自由に売却できません。ストックオプションであれば権利を行使しない判断によって資金負担を回避できますが、RSで現物株式を先に受け取ってしまうと、譲渡制限がついたまま売却先も見つからない株式を抱え続けることになります。上場前の役職員にとって、この換金性の低さは見過ごせない負担になります。

会社法上の手続きと税務確認の留意点

RSやRSUを役員報酬として取り入れる場合、会社法上の募集株式発行手続きに加え、役員報酬規制との兼ね合いを整理しなければなりません。

会社法361条1項3号は、取締役の報酬等として募集株式を交付する場合、株式数の上限その他法務省令で定める事項を決議の対象としています。定款に定めがなければ、株主総会で決議します。他方、金銭報酬債権を現物出資する方式では、同項1号又は2号と5号など、報酬の構成に応じた事項を確認する必要があります。RS・RSUという名称だけで3号の決議に統一することはできません。指名委員会等設置会社では、報酬委員会による決定について別の規定が適用されます。

会社法202条の2は、上場株式を発行する会社が、361条1項3号の定めに従って募集株式の発行又は自己株式の処分をする場合の特則です。払込金額等と払込期日等の定めを不要とし、金銭の払込み又は財産の給付を要しない旨と割当日を定めます。株式数など、ほかの募集事項や必要な決議がすべて不要になるわけではありません。同条3項は、指名委員会等設置会社の取締役・執行役について読替えを定めています。

未上場会社や、特則の対象とならない従業員への交付では、通常の募集株式の手続に沿った設計が必要です。金銭報酬債権の現物出資を用いる場合には、出資財産の内容と価額、検査役調査の要否などを確認します。未上場会社の多くは会社法上の非公開会社ですが、「未上場」と「非公開会社」は同じ意味ではありません。定款の譲渡制限の有無と機関設計を確認して、決議機関を特定してください。

税務について、国税庁の所得税基本通達23~35共-5の3は、特定譲渡制限付株式等の収入すべき時期を原則として譲渡制限の解除日としています。一定の死亡時の取扱いがあり、会社が無償取得することとなった株式は課税しない旨も示しています。したがって、RSを交付時課税と一括りにするのは適切ではありません。所定の要件を満たすか、所得区分や評価額はどうなるかを、具体的な契約条件と照合してください。

制度選択における判断軸と設計の進め方

本人の資金負担を比べる際は、付与時、権利行使・株式交付時、課税時の3段階を分けてください。税制適格ストックオプションは、要件を満たす場合に権利行使時の課税を繰り延べる制度であり、行使価額の払込みを不要とするものではありません。RSやRSUでも、現金での出資が不要な設計と、売却前の納税資金まで不要な設計は別です。

制度を選ぶ際は、株主になる時期、対象者の役職、在籍・業績条件、途中退任時の取扱いを条件表に記載します。そのうえで、新株発行と自己株式処分のどちらを使うか、必要な決議と税務確認を誰が担当するかを決めます。未上場会社では、株価算定の方法と費用、売却可能になる時期、売却前に課税される場合の負担を、付与前に対象者へ説明できる状態にしておく必要があります。

株式報酬の設計には、資本政策、会社法と税務の判断が重なります。ストックオプションの位置づけは資本政策としてのストックオプションで、個別の論点は税制適格ストックオプションの応用論点で解説しています。RSやRSUの導入時には、同じ条件表を弁護士と税理士が確認し、決議内容と税務上の前提を一致させてください。

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