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自社ポイント・コインの資金決済法該当性|設計前に決めること

こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。

自社のWebサービスやアプリに「ポイント」や「コイン」の仕組みを取り入れる際、それが資金決済法上の前払式支払手段に当たるかどうかを最初から判断できるケースは多くありません。有償で販売するのか無償で付与するのか、他社の店舗でも利用可能にするのか、あるいは有効期限をどう設定するのかによって結論が左右されるからです。

前払式支払手段に当てはまる場合には、適用除外の有無、利用先や未使用残高に応じて、届出・登録、供託、払戻しの制限などへの対応を確認する必要があります。一方、該当しなければこれらの義務を負うことはありません。制度設計を誤って後から手戻りが発生しないよう、条文と政令の基準に沿って判断の筋道を確認していきます。

前払式支払手段の成立要件と無償ポイントの切り分け

資金決済法第3条第1項は、前払式支払手段を第1号(金額型)と第2号(数量型)に分けて定義しています。前者は金額に応じた対価を得て発行され代価の支払いに充てられるもの、後者は物品やサービスの数量に応じた対価を得て発行され給付を請求できるものを指します。

要件を分解すると、次の3点に集約されます。

  • 証票や電磁的記録に金額または数量が記録されていること(価値の保存)
  • その記録に応じた対価を得て発行されていること(対価の授受)
  • 代価の弁済や物品・役務の給付請求に使えること(権利の行使)

これらすべてが揃って初めて規制対象となります。実務で論点になりやすいのが対価の要件です。登録キャンペーンや利用実績に応じて無償で配るポイントは、ユーザーから対価を受け取らずに発行されるため、単体で見れば前払式支払手段には該当しません。ただし、有償で購入されたポイントと無償付与のポイントを同じ残高として混ぜて管理すると、有償発行分の未使用残高を正確に把握しにくくなります。無償ポイントを併用する場合も、有償分と残高を区分し、消費順序を定めておく必要があると考えられます。

適用除外となる6か月ルールと実務上の運用

資金決済法第4条第2号は、発行日から政令で定める期間内に限って使用できる前払式支払手段を規制の適用除外としています。この期間について、資金決済法施行令第4条第2項は「六月とする」と定めています。つまり、発行日から6か月以内に限って使える設計にしておけば、前述の3要件を満たしていても同法の前払式支払手段に関する規定の適用対象から外れます。

ここで気をつけたいのは、利用規約の文言だけでなくシステムの実際の運用実態が評価される点です。規約に有効期間6か月と書いてあっても、期限切れ後もそのまま利用できる状態が続いていたり、システム上で失効処理が自動で行われていなかったりすると、期間制限が形骸化しているとみなされ適用除外が認められないリスクがあります。キャンペーン等で有効期限を都度延長するような設計も見直しの対象です。

短期間で使い切るクーポン型のポイントであればこの6か月ルールに収めやすい一方、長期的に貯める会員プログラムや実質的に無期限で使える設計を目指すのであれば、当初から前払式支払手段としての規制対応を織り込んで進めることになります。

自家型と第三者型の区分および届出・供託の義務

前払式支払手段は、同法第3条第4項の自家型と第5項の第三者型に分かれます。自家型は自社や政令で定める密接関係者(過半数の議決権を持つ親会社・子会社など)でのみ使えるものを指し、第三者型はそれ以外の資本関係のない他社加盟店などでも使えるものを指します。他社店舗での支払いにも利用できる設計なら第三者型に該当し、届出制である自家型とは異なり、事前の登録手続(同法第7条以下)や体制整備が必要になります。他社ポイントとの交換機能は、交換後のポイントの発行者と利用先を踏まえて別途確認する必要があります。

自社サービス内だけで完結する自家型であっても、無条件で自由に発行できるわけではありません。毎年3月31日と9月30日の基準日において、未使用残高(基準日未使用残高)が1,000万円(同法施行令第6条第1項)を超えた場合、内閣総理大臣への届出義務が生じます(同法第5条第1項)。複数の自家型ポイントを発行している場合は個別の残高ではなく合計額で判定されます。

さらに、基準日未使用残高が1,000万円を超えたときは、その未使用残高の2分の1以上の額について発行保証金の供託が必要です(同法第14条第1項)。供託には国債証券等の債券を充当でき、所定の保全契約や信託を用いる方法もあります(同法第14条第3項、第15条、第16条)。供託する場合の期限は原則として基準日の翌日から2か月以内です。発行残高が伸びるほど保全負担も増大するため、事業計画の段階で残高の推移と資金手当てを想定しておくことが大切です。

払戻しの原則禁止と資金移動業との境界線

届出をした自家型発行者や登録を受けた第三者型発行者は、事業廃止等の場合(同法第20条第1項各号)を除き、発行した前払式支払手段の保有者への払戻しが原則として禁止されています(同条第5項)。通常のサービス運営中にユーザーからの要請に応じて自由に返金に応じることは認められません。無制限な払戻しを許すと、出資法が規制する預り金に接近してしまうためです。少額払戻しなど省令で定める例外はありますが、適用条件を確認せずに「余ったポイントを現金で払い戻す」機能を設けることは避ける必要があります。

また、ポイントの利用者間移転や銀行口座への出金を認める場合は、移転先での使途、払戻しの仕組み、資金の流れを確認する必要があります。設計によっては為替取引に該当し、資金移動業の登録が必要になる可能性があります。移転可能な前払式支払手段にも別途の規制があるため、利用者間で動かせるという一点だけで業態を決めることはできません。

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