ECサイトの特商法対応|広告表示・最終確認画面・返品特約の実務
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
ECサイトの「特定商取引法に基づく表記」を埋めても、購入直前の画面に送料や定期購入の条件が出ていなければ、公開前の確認は終わりません。商品ページを担当する人、カートを設定する人、返品を受け付ける人が別々の場合には、それぞれの説明が食い違うこともあります。
特定商取引法は、広告を見て購入を検討する段階と、契約を申し込む段階の双方に表示のルールを置いています。返品特約には、表示方法によって適用される条件が変わるという問題もあります。自社の販売条件を決め、その条件が実際の注文操作を通じて伝わる状態にすることが、ECサイトの法務確認の中心となります。
以下は、主に国内の消費者へ商品を販売するECサイトを対象とした説明です。事業のための取引などには適用除外があり、サービスの提供や特別な法規制を受ける取引では、商品通販と同じ扱いにならない部分があります。
広告表示義務と「特商法表記」の範囲
特定商取引法11条は、通信販売の販売条件等を広告するときに、価格、支払時期・方法、引渡時期などを表示するよう定めています。送料を価格に含めない場合は、販売価格と送料の双方が対象になります。申込期間を設けるときはその期間、申込みの撤回・解除については返品特約を含む条件も表示事項です。
同条6号と施行規則には、販売業者の名称・住所・電話番号、法人の代表者又は通信販売の責任者の氏名なども定められています。「特定商取引法に基づく表記」という名称のページは、こうした情報を購入者へ届けるために用いられています。ページを設けたという形式だけで、他の広告や注文画面の表示を確認しなくてよいことにはなりません。
消費者庁の「通信販売」ガイドは、表示事項のほか、省略できる場合の条件も説明しています。請求に応じて遅滞なく書面等を提供する旨を表示し、実際にも対応できる措置を講じれば、一部の事項を省略できる制度があります。ただし、返品の可否・期間等の条件・費用負担など、省略できない事項もあります。「問い合わせがあれば回答する」という運用を、すべての表示事項に当てはめることはできません。
返品条件の欄を空白にしたまま、注文だけ受け付ける状態には注意が必要です。返品を受ける方針であっても、その期間や送料の負担が分からなければ、購入者は費用を含めた判断ができません。商品ごとに条件を変える場合には、共通の表記ページと各商品の説明が矛盾しないようにすることになります。
最終確認画面の六つの表示事項と取消し
同法12条の6は、事業者が用意した申込みの手続に従って購入者が注文する場面について、表示すべき事項を定めています。インターネット通販では、購入者が申込みを確定する前の最終確認画面が対象になります。11条の広告表示に加え、この段階で購入者が契約内容を確認できることが求められます。
対象は、商品の分量、販売価格、支払時期・方法、引渡時期、申込期間の定めがある場合の内容、申込みの撤回・解除に関する事項の六つです。価格欄には購入する商品の代金と送料など、今回の注文に応じた負担が反映されているかを確認します。定期購入では、単品の数量や初回代金だけでは契約全体の内容を示せないため、継続する取引の条件が問題になります。
同条2項は、操作が契約の申込みになることについて誤認させる表示と、六つの事項について誤認させる表示を禁じています。注文を確定する操作なのに、単に次の説明へ進むだけだと思わせる表示は、この規定との関係で検討することになります。ボタンの文言だけを切り離して判断せず、その前後の説明を含めて、購入者にどう伝わるかを見る必要があります。
表示の不備は、行政規制にとどまりません。同法15条の4は、不実の表示、必要事項の不表示又は誤認させる表示によって購入者が所定の誤認をし、その誤認に基づいて申し込んだ場合に、申込みの意思表示を取り消せると定めています。表示違反があればすべての契約が自動的に無効になるという制度ではなく、表示、誤認、申込みの関係が要件になります。
このため、「利用規約に記載してある」という事実だけでは、最終確認画面についての問題への回答として不十分な場合があります。購入者がどの経路で注文し、どの表示を見たのかまで確認して判断することが必要と考えます。
クーリングオフと異なる八日間の返品ルール
通信販売には、訪問販売などに設けられているクーリングオフ制度はありません。一方、同法15条の3は、商品等の引渡しを受けた日から起算して八日を経過するまで、申込みの撤回又は契約の解除ができるというルールを設けています。この場合の引取り・返還に要する費用は、購入者が負担します。ここで説明する商品等の売買についての制度を、役務提供の解約にもそのまま適用することはできません。
同条1項ただし書は、販売業者が返品に関する特約を所定の方法で表示した場合、この八日間のルールによらないことを認めています。購入者の自己都合による返品を受け付けない特約や、独自の返品期間を設ける特約も、その内容と表示方法を検討することになります。
インターネット通販で注意したいのは、広告への表示だけで足りない点です。電子消費者契約に該当する場合、同条ただし書と施行規則44条は、広告に加え、申込みの操作をする画面でも特約を容易に認識できるよう表示することを求めています。消費者庁のガイドも、最終確認画面への表示を案内しています。
表記ページの奥に「返品不可」と書いてあるだけで、八日間のルールを排除できると判断するのは早計です。返品の可否、受け付ける場合の期間等の条件、返送料の負担を、購入者が申込みの前に把握できるかが問題となります。
自己都合による返品と、商品が壊れている、注文した種類と違うといった場合の対応も分けて考えます。後者は、民法の契約不適合責任などが問題となる場面です。「返品不可」の一言で、商品の不具合に関する責任まで一律に免除されるとは限らず、消費者契約法による条項の無効も別途検討することになります。返品案内では、正常な商品を購入者の都合で返す場合と、不具合の連絡を受ける場合の窓口・条件を混同しない書き方が適切と考えます。
単品販売と定期購入で異なる画面確認
これらの規定をECサイトへ当てはめる際は、カートの管理画面に何を入力したかに加えて、購入者に表示される注文内容を確認します。商品を選び、数量や配送先を変更し、注文を確定する直前まで進めると、共通の表記ページだけでは分からない食い違いを見つけやすくなります。
単品販売では、数量変更後の代金、配送先に応じた送料、選択した決済方法の支払時期などが、実際の条件と合っているかが確認対象です。「送料無料」と広告する場合も、離島や購入金額などに条件があるなら、購入者がその条件を理解できる表示になっているかを商品ページと注文画面の両方で見ます。発送予定を変更した際には、商品説明を直しても、カート側に以前の予定が残ることがないようにします。
定期購入では、初回から何回目まで、どの量を、いくらで購入する契約かを示す必要があります。最低購入回数が決まっている契約なら、その回数と期間中の支払総額を初回の割引価格から切り離さずに確認できる形にします。無期限に続く契約であれば、継続する旨、各回の代金、支払・配送の時期や解約条件など、その契約に即した表示が必要です。回数を固定した契約と、解約するまで続く契約を同じ文面で処理しないことが大切です。
「いつでも解約可能」という案内も、次回発送の何日前までに、どの方法で申し出る必要があるのかによって、購入者が受ける印象は変わります。申出の期限や連絡先が画面から分からない場合には、案内文を補うとともに、実際の受付方法と一致させます。電話で受け付けると表示するなら、窓口担当者が案内する条件まで確認対象になります。
確認する画面は、パソコン用だけでは足りません。スマートフォンで文字が省略されていないか、返品条件までたどり着けるか、注文内容を確認・訂正できるかを実際に操作して確かめます。外部の決済サービスへ移動する経路や、通常購入から定期購入へ切り替える経路がある場合も、その経路で最後に表示される内容を確認します。
公開前に確認した画面は、確認日と対象の商品・プランを対応させて保存しておくと、後日の問い合わせ時に表示内容を調べられます。購入者との争いが生じた際には、現在の画面ではなく、申込みが行われた時点の広告・条件・画面が判断資料となるためです。価格や解約条件を変更するときにも、変更前後の表示を追える記録が役立ちます。
表示違反に対する行政処分と罰則
特商法の表示規制には、業務改善の指示、業務停止命令などの行政処分があります。同法14条・15条がそれぞれの要件を定めており、必ず指示を経てから業務停止に進むという一律の順序ではありません。注文画面を改修した場合も、既に受け付けた申込みへの対応は別に検討することになります。
最終確認画面について、12条の6第1項に違反して必要事項を表示しない行為や、不実の表示をする行為には、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、若しくはその両方が定められています(70条2号)。同条2項の誤認させる表示には100万円以下の罰金が定められています(72条1項4号)。法人の業務に関する違反では、行為者に加え法人にも罰金を科す規定があります。
こうした規制を踏まえると、公開前の確認を表記ページ一枚の校正で終わらせず、販売条件の決定、購入時の表示、返品・解約の受付を結び付けて確認することに意味があると考えています。