カーボンクレジットとGX施策|環境価値の表示規制と売買契約の確認点
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
GX、脱炭素、カーボンニュートラル、カーボンクレジット、J-クレジット、再エネ、非化石証書、カーボン・オフセットなど、環境価値をめぐる事業はスタートアップにとっても重要な領域になっています。
環境価値は、単に「良いことをしている」という話ではありません。
顧客に対してどのような環境価値を提供しているのか、どのクレジットを使っているのか、どの範囲の排出量を埋め合わせるのか、どの時点で権利が移転するのか、表示が過大になっていないかを確認する必要があります。
この領域では、環境価値の「表示」と「契約」を分けて見ることが重要です。
表示は、広告、ウェブサイト、営業資料、プレスリリース、商品説明、サステナビリティレポートの問題です。
契約は、クレジットの売買、移転、取消し、証明書、表明保証、利用範囲、二重計上、価格変動、法令変更の問題です。
この二つを混ぜてしまうと、事業としての説明が曖昧になりやすいと考えます。
何の環境価値を扱っているのか
カーボンクレジットと一言でいっても、制度や商品は一つではありません。
J-クレジット、JCM、海外ボランタリークレジット、非化石証書、再エネ証書、排出量取引に関する枠など、法的性質や利用目的が異なるものがあります。
スタートアップがサービスとして提供する場合には、まず、自社が扱っている環境価値が何なのかを明確にする必要があります。
顧客から見ると、「CO2削減」「カーボンニュートラル」「オフセット」「実質再エネ」「脱炭素」という言葉は似て見えます。
しかし、実務上は、排出量の算定、削減努力、クレジット購入、無効化、証明書発行、レポーティングは別の作業です。
ここを曖昧にすると、顧客が「自社の排出量が削減された」と理解していたのに、実際には第三者の削減・吸収価値を購入していたにとどまる、という認識のずれが生じる可能性があります。
表示では、過大な脱炭素表現に注意する
GX関連サービスでは、表示の問題が非常に重要です。
「ゼロカーボン」「CO2ゼロ」「環境負荷ゼロ」「脱炭素を実現」「地球にやさしい」といった表現は、顧客に強い印象を与えます。
しかし、実際には、対象範囲が商品の配送部分だけなのか、製造過程まで含むのか、企業全体の排出量なのか、特定イベントの排出量なのかによって意味が変わります。
また、クレジットを購入しただけなのか、クレジットを無効化したのか、将来無効化する予定なのかによっても説明は変わります。
環境省は、2026年3月31日に環境表示ガイドラインの改定を公表しています。国内外でグリーンウォッシュ対応への関心が高まる中で、自己宣言型の環境表示についても、根拠、対象範囲、算定方法、利用した制度、期間、第三者検証の有無を説明できるようにする必要があります。
スタートアップの営業資料では、わかりやすさを優先して表現が強くなりがちです。
ただ、環境価値の表示は、顧客企業の開示や広告にも影響するため、BtoBサービスであっても慎重に設計すべきです。
契約では、移転・取消し・証明を決める
カーボンクレジット関連の契約では、何をいつ移転するのかが重要です。
クレジットの売買なのか、媒介なのか、代理購入なのか、オフセット実施の業務委託なのか、レポーティング支援なのかによって、契約の作り方が変わります。
特に、クレジットの移転時点、無効化時点、証明書の発行、価格変動、在庫不足、制度変更、取消不能性、二重使用の防止、第三者の権利侵害がないことをどう扱うかは、契約上の重要事項です。
顧客が上場会社や大企業の場合、サステナビリティ開示、監査、内部統制、取引先説明のために、証跡を求められることがあります。
そのため、サービス提供会社としては、単に「クレジットを手配しました」という運用ではなく、購入記録、移転記録、無効化記録、証明書、算定資料を残す必要があります。
スタートアップが注意すべき収益モデル
GX関連サービスでは、収益モデルによって法務論点が変わります。
クレジットを自社で仕入れて販売するモデルでは、在庫リスク、価格変動リスク、品質リスクを負います。
顧客の代理として購入するモデルでは、委任契約、利益相反、手数料の開示、購入先選定の合理性が問題になります。
マーケットプレイスモデルでは、売主と買主の関係、決済、登録情報、クレジットの真正性、取引停止、紛争対応を設計する必要があります。
コンサルティングモデルでは、排出量算定、削減施策、開示支援、クレジット購入支援の責任範囲を明確にすることが重要です。
環境価値は制度変更の影響を受けやすいので、法令変更、制度変更、取引所ルール変更、対象クレジットの適格性変更についても、契約で手当てすべきです。
まとめ
GX・カーボンクレジット施策では、環境価値の表示と契約を分けて見る必要があります。
表示では、何の排出量について、どの制度に基づき、どの範囲で、どの程度の環境価値を主張しているのかを確認します。
契約では、クレジットの移転、無効化、証明、二重計上防止、制度変更、責任範囲を決める必要があります。
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