税務調査と更正処分への不服申立て|再調査の請求・審査請求・税務訴訟の期限
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
法人税の税務調査が終わりに近づくと、調査担当者は更正をすべきと認めた金額とその理由を会社に説明し、原則として修正申告を勧めます。この勧奨に応じて修正申告書を提出すると、その税額について会社は不服申立てができなくなり、後から争うには更正の請求から始めることになります。勧奨に応じなければ、税務署長が更正処分をします。会社は、更正通知書を受け取った日の翌日から3か月以内に、再調査の請求か審査請求を選んで申し立てます。
審査請求の裁決にも納得できなければ、裁決があったことを知った日から6か月以内に取消訴訟を起こせます。期限を過ぎた申立てや訴えは、正当な理由がない限り、中身を審理されないまま却下されます。どの手続を選んでも、会社の主張を裏付ける材料の中心は、調査の段階で会社が説明した内容と提出した資料です。
調査担当者の権限と調査段階で残す記録
国税通則法(以下「通則法」)74条の2第1項は、法人税の調査に必要があるときに税務署などの職員が法人に質問し、帳簿書類その他の物件を検査できると定めています。職員は、これらの物件の提示や提出を求めることもできます。質問に答えないことや偽りの答弁をすること、正当な理由なく提示や提出の求めに応じないことには罰則があります。法定刑は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(通則法128条2号、3号)。国税庁の税務調査手続に関するFAQは、罰則を背景に権限を強権的に行使することは考えておらず、提示や提出は納税者の理解と協力の下で承諾を得て行うと説明しています。
実地の調査をする場合、税務署長等は法人にあらかじめ通知をし、税務代理人である顧問税理士がいればその税理士にも通知します(通則法74条の9第1項)。通知する事項は、調査の開始日時と場所、調査の目的、対象となる税目・期間・帳簿書類などです。法人が合理的な理由を付けて日時や場所の変更を求めれば、税務署長等は協議するよう努めます(同条2項)。違法又は不当な行為を容易にするおそれがあるなどと税務署長等が認める場合は、事前通知をせずに調査をすることもあります(74条の10)。
調査の結果、更正をすべきと認める場合、調査担当者は、更正をすべきと認めた額とその理由を含めて調査結果の内容を説明します(通則法74条の11第2項)。前記のFAQによると、この説明は原則として口頭で行われ、納税者が求めても、調査結果を記載した書面は交付されません。説明を受ける際は、非違の項目ごとに金額と理由を書き取り、理由が分からない項目はその場で質問してください。
調査担当者は、代表者や担当者から聴き取った内容を質問応答記録書にまとめ、末尾に署名押印を求めることがあります。審査請求に進めば、質問応答記録書は、処分をした税務署長などの原処分庁が提出する証拠の一つになり得ます(通則法96条2項)。署名を求められたら、記載が自分の説明どおりかを読み、推測で答えた部分や説明と異なる部分があれば訂正を求めてください。記憶が確かでない事実を問われたときは、推測を交えて答えるより、社内の記録を確かめてから回答すると伝える方が、後に記録書の記載と食い違うおそれを減らせます。
後の手続で主張の裏付けに使うため、会社側でも次の記録を残しておく必要があります。
- 調査日ごとの出席者と、質問・回答の要旨
- 提示又は提出した帳簿書類の一覧と、提出した写しの控え
- 留置きに応じた物件と、その際に交付を受けた書面(通則法施行令30条の3第1項)
- 調査結果の説明の日時と説明者、非違の項目ごとの金額と理由
- 取引の実態を示す契約書、稟議書、議事録、メールの保管場所
これらの記録は、更正通知書に書かれた処分の理由と、調査の場で受けた説明を突き合わせるときに使います。審査請求書の理由には、通知書に示された処分の理由に対する会社の主張を明らかにして書かなければなりません(通則法87条3項)。審査請求では、原処分庁が提出した質問応答記録書などの書類について、閲覧や写しの交付を求めることもできます(97条の3第1項)。会社側の記録があれば、記録書の記載と実際のやり取りの違いを具体的に指摘できます。
修正申告の勧奨と更正処分の違い
通則法74条の11第3項は、調査担当者が調査結果を説明する際に、修正申告を勧奨できると定めています。勧奨する場合、調査担当者は、修正申告書を提出すると不服申立てはできないが更正の請求はできることを説明し、その旨を記載した書面を交付しなければなりません。国税庁のFAQは、勧奨に応じるかどうかを納税者の任意の判断としています。応じなければ調査結果に基づいて更正等の処分をするものの、応じなかったことで不利な取扱いを受けることは基本的にないとも説明しています。
修正申告は会社が自ら行う申告で、税務署長の処分ではありません。修正申告をした税額を後から争うには、法定申告期限から5年以内に更正の請求をすることになります。その際は、申告の計算が税法の規定に従っていなかったことや計算の誤りを、更正請求書に理由と事情を記載して示します(通則法23条1項1号、3項)。税務署長が更正をすべき理由がない旨を通知すれば(同条4項)、会社はその通知に対して不服申立てをすることができます。国税不服審判所も、この通知を不服申立ての対象となる処分に挙げています。
更正処分を受ける場合は、税務署長が処分の理由を更正通知書に示します。通則法74条の14第1項は、国税の処分について行政手続法の多くの規定を適用除外としていますが、不利益処分の理由の提示を定めた同法14条は除外していません。青色申告書に係る法人税の更正については、法人税法130条2項も更正通知書への理由の付記を求めています。会社は、示された理由のどの部分が事実と異なり、どの部分が法令の解釈として誤っているかを特定して争うことができます。
加算税の負担は、修正申告でも更正でも通常は変わりません。過少申告加算税は修正申告にも更正にも課されます。割合は納付すべき税額の10%で、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%です(通則法65条1項、2項)。調査の通知を受けた後の修正申告で割合が5%になるのは、その修正申告が調査による更正を予知してされたものでない場合に限られます(同条1項括弧書)。国税庁の事務運営指針は、臨場調査や非違事項の指摘などにより法人が調査のあったことを了知した後の修正申告を、原則として更正を予知してされたものとしています。
納付した税額が後に減額されたときの還付加算金も、二つの手続で計算の始まりが異なります。更正処分が取り消された場合は、納付した日の翌日から計算されます(通則法58条1項1号イ)。修正申告の税額が更正の請求に基づいて減額された場合の起算日は、二つの日のいずれか早い日の翌日です。一つは更正の請求をした日の翌日から3か月を経過する日、もう一つは減額の更正があった日の翌日から1か月を経過する日です(同項2号)。
隠蔽又は仮装があったとされると、過少申告加算税に代えて、原則として35%の重加算税が課されます(通則法68条1項、4項)。加算税の賦課決定は修正申告とは別の処分なので、修正申告をした後でも、重加算税の賦課決定には不服申立てができます。国税不服審判所の平成30年9月21日裁決は、修正申告の後に重加算税の賦課決定を争った事案です。法人は、調査担当職員の指摘を受けて修正申告をしました。原処分庁は、代表者の個人的な飲食代を損金に算入したという隠蔽又は仮装があったとして重加算税の賦課決定をし、法人は再調査の請求を経て審査請求をしています。代表者は、カードで支払った飲食代は個人的な利用分であると述べた質問応答記録書に署名押印していました。
審判所は、この申述が個々の支出に触れない概括的なもので具体性に乏しく、内容を裏付ける客観的証拠もないと指摘しました。そのうえで、代表者の日程表や取引先の従業員の答述から、取引先との飲食が含まれていると推認しています。結論として隠蔽又は仮装の事実を認めず、重加算税のうち過少申告加算税相当額を超える部分を取り消しました。他方で、総勘定元帳に飲食の相手方や目的の記載がなく、それを明らかにする資料もなかったため、全てが交際費であるとの認定まではしていません。個別の事実関係に基づく判断ですが、この裁決で審判所は、記録書に署名押印があることだけで結論を出さず、申述の具体性と客観的な資料の有無を検討しています。
指摘の一部にだけ納得している場合は、その項目について修正申告をし、残りの項目は更正を受けて争う方法も考えられます。勧奨を受けた段階で、指摘の項目ごとに認めるか争うかを顧問税理士と決め、争う項目がある場合は、修正申告書を提出する前に弁護士にも相談してください。
再調査の請求・審査請求の期限と選び方
通則法75条1項1号により、税務署長の処分に不服がある者は、その税務署長に対する再調査の請求と国税不服審判所長に対する審査請求のどちらかを選べます。更正通知書に国税局の職員が調査をした旨の記載がある場合は、国税局長がした処分とみなされ、再調査の請求は国税局長に対して行います(同条2項1号)。
期限は次の表のとおりです。正当な理由がある場合を除き、期限を過ぎた申立ては却下されます(通則法77条、83条1項、98条1項)。
| 手続 | 期間の数え始め | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 再調査の請求 | 更正通知書を受け取った日の翌日 | 3か月 | 通則法77条1項 |
| 審査請求(再調査の請求を経ない場合) | 更正通知書を受け取った日の翌日 | 3か月 | 通則法77条1項 |
| 審査請求(再調査決定を経た場合) | 再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日 | 1か月 | 通則法77条2項 |
| 取消訴訟 | 裁決があったことを知った日の翌日 | 6か月 | 行政事件訴訟法14条3項 |
このほか、処分があった日の翌日から1年を経過した後は、正当な理由がない限り不服申立てはできません(通則法77条3項)。取消訴訟も、裁決の日から1年を経過すると、正当な理由がない限り起こせなくなります(行政事件訴訟法14条3項)。期間は初日を算入せずに暦に従って数え、最後の月の起算日に応当する日の前日に満了します(通則法10条1項)。2026年10月15日に更正通知書を受け取った場合、10月16日から数え始め、2027年1月16日の前日である1月15日が期限です。
期限の日が土日や祝日などに当たる場合は、その翌日が期限になります(通則法10条2項、同法施行令2条2項)。国税庁も、再調査の請求の手続案内で同じ扱いを示しています。郵便で提出した場合は、通信日付印の日に提出したものとみなされます(通則法77条4項、22条)。再調査の請求書と審査請求書には処分の通知を受けた年月日を書くため(81条1項2号、87条1項2号)、更正通知書が届いた日を記録し、封筒も保管してください。
再調査の請求では、処分をした税務署長が処分を見直します。請求人は口頭で意見を述べる機会を求めることができ、証拠書類を提出できます(通則法84条1項、6項)。国税庁は標準審理期間を3か月と定めており、令和7年度に処理した1,448件のうち、請求が一部でも認められたのは116件(8.0%)でした。請求をした日の翌日から3か月を経過しても決定がない場合は、決定を待たずに審査請求ができます(75条4項1号)。
審査請求では、国税不服審判所長が担当審判官1名と参加審判官2名以上を指定し、処分や再調査決定に関与した者はこれに含まれません(通則法94条)。会社は、原処分庁の答弁書に対して反論書を提出でき(93条、95条1項)、口頭意見陳述では担当審判官の許可を得て原処分庁に質問できます(95条の2第2項)。国税不服審判所長は、国税庁長官の通達と異なる法令解釈で裁決をすることもでき、その場合はあらかじめ国税庁長官に意見を通知します(99条1項)。裁決は税務署長などの関係行政庁を拘束します(102条1項)。国税不服審判所は標準審理期間を1年と定めており、令和7年度に処理した3,128件のうち、請求が一部でも認められたのは226件(7.2%)でした。
どちらを選ぶかは、争点の性質で考えます。調査で示しきれなかった契約書や議事録があり、事実関係を補えば処分を見直す余地がある場合は、標準審理期間が3か月の再調査の請求で見直しを求める方法があります。争点が法令の解釈や、調査で既に説明した事実の評価にある場合は、処分をした税務署長が同じ資料から結論を変える見込みは乏しいと考えられます。この場合は最初から審査請求を選ぶ方が、裁決や訴訟までの期間を短くできます。原処分庁が何を根拠に処分したかを書類で確かめたい場合も、閲覧の手続がある審査請求が適しています。再調査の請求を選んだ場合も、決定書の謄本が届いてから審査請求までは1か月しかないため、審査請求書の準備を並行して進めてください。
不服申立てをしても、更正処分の効力や徴収の手続は止まりません(通則法105条1項本文)。差し押さえた財産の換価は、原則として決定や裁決があるまで行われません(同項ただし書)。ただし、納付しないまま争って処分が維持されれば、その間の延滞税も負担することになります(60条1項2号)。納付したうえで争い、処分が取り消されれば、納付した税額は還付加算金とともに還付されます。納付が難しい場合は、徴収の猶予の申立てができます(再調査の請求について105条2項、審査請求について同条4項)。
審査請求前置と取消訴訟の出訴期間
国税の処分の取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ起こせません(通則法115条1項)。行政事件訴訟法8条1項は、審査請求ができる処分でも直ちに取消訴訟を起こせることを原則としています。ただし、法律に裁決を経た後でなければ訴えを起こせない旨の定めがある場合は別で、通則法115条1項がこの定めに当たります。例外として、審査請求をした日の翌日から3か月を経過しても裁決がない場合などは、裁決を経ずに訴えを起こせます(115条1項1号から3号)。国税不服審判所は、この場合も訴訟とは別に裁決を求め続けることができると案内しています。
裁決に不服があるときは、裁決があったことを知った日から6か月以内に取消訴訟を起こします(行政事件訴訟法14条3項)。訴えの対象は、通常は元の更正処分です。処分の取消しの訴えと、審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えのどちらも起こせる場合、裁決の取消しの訴えでは処分の違法を理由にできないためです(同法10条2項)。被告は処分をした税務署長が所属する国で(同法11条1項1号)、訴えを起こしても処分の執行は止まりません(同法25条1項)。
税務訴訟では、主張と証拠を出す時期にも定めがあります。通則法116条1項は、会社が損金の額など自社に有利な事実について、課税処分の基礎とされた事実と異なると主張する場合を定めています。この場合、国が基礎となった事実を主張した日以後、会社は遅滞なくその事実を具体的に主張して証拠の申出をしなければなりません。これに反した主張や証拠の申出は、民事訴訟法157条1項の適用では時機に後れて提出したものとみなされ、却下される可能性が生じます(通則法116条2項)。訴訟になってから資料を探し始めると間に合わないおそれがあるため、審査請求の段階で、主張を裏付ける証拠をそろえておく必要があります。
顧問税理士と弁護士の役割分担
税理士法2条1項は、税務代理、税務書類の作成、税務相談を税理士の業務と定めています。税務代理とは、税務官公署に対する申告や不服申立てと、税務調査や処分に関して税務官公署にする主張・陳述を代理することです。ここでいう税務官公署には国税不服審判所も入り、税務書類の作成の対象にも不服申立書が挙げられています。税理士又は税理士法人でない者は、税理士法に別段の定めがある場合を除き、これらの業務を行えません(同法52条)。調査への立会い、修正申告書や更正請求書の作成、税額の計算は、日頃から会社の帳簿と申告に携わる顧問税理士の業務です。
税務代理権限証書を提出した税理士は、調査の事前通知を受ける税務代理人になります(通則法74条の9第1項、3項2号)。会社が同意すれば、調査結果の説明なども税理士に対して行うことができます(74条の11第4項)。この場合も、会社は説明の内容を税理士から書面で受け取り、非違の項目ごとの金額と理由を社内で共有してください。
再調査の請求と審査請求では、弁護士、税理士その他適当と認める者を代理人に選任できます(通則法107条1項)。弁護士が税理士業務を行うには、所属弁護士会を経て国税局長に通知する制度があります(税理士法51条1項)。国税不服審判所も、代理人の事務が税理士業務に当たるときはこの規定と52条の適用に留意するよう案内しています。取消訴訟で訴訟代理人になれるのは弁護士です(民事訴訟法54条1項本文、行政事件訴訟法7条)。税理士は、租税に関する事項について、弁護士である訴訟代理人とともに補佐人として裁判所に出頭し、陳述できます(税理士法2条の2第1項)。補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し又は更正しない限り、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされます(同条2項)。
分担は、税額の計算にかかわる作業と、事実の認定や法令の解釈にかかわる作業で分けると明確になります。税理士は、所得や税額の計算、会計処理と申告の経緯の説明、修正申告や更正の請求の書類を受け持ちます。弁護士は、契約書や議事録、メールから取引の事実関係を組み立て、契約の性質や税法の文言の解釈を処分の理由への反論として構成します。審査請求の代理人を税理士と弁護士の双方とし、書面ごとに担当を決める方法もあり、訴訟では弁護士が訴訟代理人、税理士が補佐人として法廷に立ちます。当局の指摘が取引の事実認定や契約の解釈にかかわる場合は、修正申告に応じるかを決める前に、調査段階の記録と証拠の一覧を両者で共有してください。そのうえで3か月の期間内に誰がどの書面を作るかを決めておくと、期限の直前に作業が集中することを避けられます。