物流効率化法と運送委託契約|荷主に広がった義務と契約見直しの要点
こんにちは。LegalAgent 代表弁護士の朝戸です。
配送を委託するメーカーやEC事業者も、荷待ち時間や運送契約の書面について法律上の対応を求められています。2024年成立の物流関連改正法により、荷主の物流効率化に向けた取組と、運送契約締結時の書面交付が制度化されました。取扱貨物量が少なく特定荷主に指定されない企業でも、契約の書面交付が必要になる場合があります。物流部門と法務部門が、自社の立場を確かめた上で契約書と現場運用を見直すことが大切だと考えています。
改正の全体像と段階的な施行時期
2024年に成立した「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」は、2つの法律を同時に改正するものです。ひとつは流通業務総合効率化法(物流効率化法)で、荷主や物流事業者に対する努力義務と、一定規模以上の事業者に対する規制的措置を新設しました。もうひとつは貨物自動車運送事業法で、運送契約締結時の書面交付義務などトラック事業者の取引環境を適正化する規定が加わりました。
施行は段階的に進んでいます。国土交通省の物流効率化法ポータルによると、荷主・物流事業者等の努力義務は2025年度から、一定規模以上の特定事業者の中長期計画や定期報告等は2026年度から実施されています。物流効率化法の現行の法律名は「物資の流通の効率化に関する法律」です。法令を検索するときは、この名称も確認してください。
契約時の書面交付義務は、2025年4月1日にトラック事業者と真荷主等との取引へ導入されました。さらに2025年成立のトラック適正化二法により、2026年4月1日から貨物利用運送事業者にも対象が広がっています。国土交通省の改正法案内も、この追加改正を明示しています。トラックを自社保有しない物流会社への委託だから対象外、と判断することはできません。
荷主の努力義務と特定事業者への規制
物流効率化法上、荷主の取組は、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮が中心です。国土交通省のポータルサイトは、発荷主(第一種荷主)の努力義務として、他の貨物との積み合わせを考慮した日時の設定や、受け入れ能力を超えるトラックの集中の回避を挙げています。ドライバーがパレットなどの器具を利用できるようにすることも、その一つです。着荷主(第二種荷主)にも、受け渡し日時の協議への協力や、検品の効率化による荷役等の省力化への配慮が求められます。
これらは努力義務であり、取組が不十分なだけで直ちに罰則が科されるものではありません。国が掲げる年間125時間のドライバーの拘束時間短縮も全体の目標であり、各荷主へ一律に125時間の削減を課す義務とは区別する必要があります。ただし、荷主側が荷待ちや荷役の実態を把握していなければ、時間短縮への寄与を説明できません。
特定事業者の指定基準は、特定荷主・特定連鎖化事業者が取扱貨物重量9万トン以上、特定貨物自動車運送事業者等が保有車両150台以上、特定倉庫業者が貨物保管量70万トン以上です。前年度実績が基準値以上であれば所管大臣への届出が必要であり、基準値と同じ場合も含みます。荷主の重量は、第一種荷主、第二種荷主、連鎖化事業者それぞれの立場で算定し、企業全体の物流量を単純に合計しないことにも注意が必要です。
特定事業者には中長期計画の作成や定期報告等が義務付けられます。ただし、物流統括管理者(CLO)の選任対象は特定荷主と特定連鎖化事業者です。特定倉庫業者や特定貨物自動車運送事業者等に同じ選任義務があるわけではありません。一度指定された後も引き続き基準値以上である場合は、毎年度の指定届出は不要とされています。指定の届出と、その後の計画・報告を区別して管理する必要があります。
運送契約における書面交付義務の要件
貨物自動車運送事業法12条1項の対象では、真荷主と運送事業者等が書面を相互に交付します。運送事業者等が引き受けた貨物を別の運送事業者等へ委託する場面では、同法24条2項等に基づき委託元から委託先へ交付します。真荷主は、自らの事業に関して運送を委託する者で、貨物自動車運送事業者・貨物利用運送事業者以外の者を指します。一般消費者は含まれませんが、個人事業主は該当する場合があります。物流効率化法の特定荷主の規模基準とは別の判断です。
国土交通省の2026年3月31日時点のQ&Aは、問2-1・2-2(本文4頁)で、この交付方法の違いを説明しています。特定貨物自動車運送事業者を除くことや、災害その他緊急やむを得ない場合等の例外もあるため、委託先の事業区分と契約内容を確認する必要があります。通常のスポット輸送は、例外に当たりません。
交付書面に記載すべき事項は次の6点です。
- 運送役務の内容と対価
- 荷役作業・附帯業務等の内容と対価(契約に含まれる場合)
- 高速道路利用料や燃料サーチャージなど別途生じる費用の料金
- 契約当事者の氏名・名称および住所
- 運賃・料金の支払方法
- 書面を交付した年月日
書面はメールなどの電磁的方法で交付することも認められますが、相手方の承諾が必要です。PDFの添付だけでなく、必要事項をメール本文へ記載する方法も認められています。交付した書面の写しは1年間保存します。未定事項を後日書面で補う場合は、その交付日から当初書面も含めて1年間保存する取扱いです。
取適法が同時に適用される取引では、取引記録に別途2年間の保存義務がかかります。上記Q&Aの問2-14(本文7頁)も両法の関係を示しており、貨物自動車運送事業法の1年だけを根拠に記録を削除しないことが必要です。
必要事項は、基本契約書、運送依頼書、単価表等を相互に関連付けて明確にする方法でも対応できます。合計金額が未定でも、単価・料率と工数・数量から対価を一義的に計算できる記載が必要です。未定の附帯業務がある場合は、内容が確定した時点で、遅くとも運送前までに追加書面を交付します。
電話だけの発注は認められず、電話連絡後は直ちに書面を交付する必要があります。附帯業務の有無や内容が運送ごとに変わる場合も、基本契約を締結しただけで日々の書面が不要になるわけではありません。反対に、法定事項が基本契約にすべて記載され、役務の内容が変動しない場合は、運送依頼ごとの交付が不要となる取扱いもあります。
運送委託契約と現場運用で見直すべき点
法改正を踏まえて荷主企業が優先して着手したいのは、荷待ち時間の実態把握です。自社の拠点でトラック到着から荷役開始までにどの程度の待機が生じているか記録していない場合、契約書に待機時間料の定めがあっても交渉の材料になりません。まずは主要な拠点からでも、到着時刻と荷役開始時刻の記録を運用に組み込む形をとります。
並行して、附帯業務の明確化も欠かせない論点です。検品、棚入れ、仕分け、シール貼りといった作業について、運賃に含まれる業務なのか、別途対価が発生する附帯業務なのかを契約書や発注書面で切り分けておきます。区分が曖昧なままだと、運送会社から追加請求を受けた際に荷主企業側で対抗する根拠を持てなくなります。業務範囲や責任分担の整理については、運送委託契約のレビューの視点も参考になります。
運賃と料金の区分も確認してください。積込みや取卸し等の対価は原則として運賃と分けます。一方、上記Q&Aの問2-4(本文5頁)は、時間制運賃の場合、その時間内の積込み・取卸しの対価を運賃へ含める取扱いも認めています。この場合でも、その作業が発生する旨の記載は必要です。一括見積りについては、この例外を踏まえて適合性を判断します。
基本契約、単価表、日々の発注書について、必要事項がどこに記載されているかを確認してください。現場で追加作業を依頼できる担当者、対価の確認方法、追加書面の交付手順まで決めておく必要があると考えます。契約書の記載を実際の運用と突き合わせる方法は、産業廃棄物収集運搬契約のレビューで扱う許可範囲や搬入先の確認とも共通します。
契約書式の見直しと専門窓口
自社の取扱貨物量が特定事業者の基準に近い場合や、複数の運送会社との契約書式がばらばらで書面交付義務の記載事項を満たしているか判断に迷う場合は、社内だけで抱え込まず専門家の助言を得る方が安全です。
運送委託契約の書面交付義務への対応や、荷待ち時間・附帯業務の記載を反映した契約書式の見直しは契約関連業務で承っています。複数拠点や多数の運送会社との契約の一括点検、社内法務が不在の体制での継続的な対応は法務アウトソーシングでもご相談いただけます。